流し場の排水管に水が渦を巻いて吸われていくのを見ている男。何でもない日常生活の場面が淡々と詠まれた歌です。しかし、「空気」も一緒に吸われていくと歌ったところが巧みです。流れていくときに「ゴボゴボ」とでも音がしたのでしょうが、音がしたとは歌いません。「空気を見下す」と歌っているのです。見えないものを歌う。これこそ短歌の醍醐味(だいごみ)だと思いました。結句が字余りになっているのも味わいがあり、余韻を深めています。(本田一弘)