この歌は、人間が主役ではありません。春の黒い土が主役の歌です。作者が鍬(くわ)を打つとまるで微笑(ほほえ)むようだと歌われた土。黒い土が子どものように飛び跳ね、春のあたたかい空気を吸っています。土がとても生き生きと詠まれ、躍動感があります。読者も土から元気をもらえるような気がします。土ばかりではなく、土と一体となった作者自身も微笑んでいるのでしょう。春の土を耕す喜びが伝わって来ます。歌集『六調』より。
(本田一弘)