いつもは遠くに見ていた山。今日はその山に咲く桜を見に来た作者。「待ちつけ顔」とは、長く待っていたような顔をして、という意味です。桜の花がまるで自分を待っていてくれたかのように美しく咲いていると歌っています。作者も桜が咲くのを待っていて、桜も作者が来るのを待っていたのです。「にほふ」は嗅覚ばかりではなく、照り輝く美しさも表す語です。「嬉(うれ)しさ」と詠んだ作者の素直な感慨に胸を打たれます。歌集『枕の山』より。(本田一弘)