紙を手で裂く。日常生活ではあまりなじみのない行為です。手で丸めて捨てれば済みます。書類ならシュレッダーにかければいい。わざわざ手で裂くには、それなりの理由があったのかも、と読者に想起させます。下句は句またがり。うねっとしたリズムの最後に「春の歌」が置かれ、一首が閉じられます。絶望や断念が感じられませんか? 暗くはなく、ほのかな明るさがあり。それぞれの春があるのでしょう。歌集『やがて秋茄子へと至る』より。
(駒田晶子)