人は生きるために食べます。でも、何を食べても同じではなく、長い目で見ると、食べ方がそれぞれの人生を左右することになるかもしれないほど、大きく違ってきます。さらに「食べ物の質」は、食材の背景、特に生産者や生産方法、加工などに関係してきます。

 食育NPO「おむすび」(大崎市)は11年前から、「食」の楽しさを伝える活動を仙台市内などで続けています。生産、流通、加工を経て調理して食べるまで「作る人と食べる人をつなぐ」をキーワードにしています。

 健康な生活を送るには、食を楽しむと同時に「安心・安全」といった視点が大切。こうしたことを家庭内で伝えていくのが「食育」で、その実践が重要だといわれています。

 「おむすび」は、日本人の主食であるコメをおいしく食べることを基本に料理教室を開催。副菜になる野菜や魚、肉などをおいしく食べるための調理方法を教えるほか、食材の背景を知るきっかけとなるように工夫しています。

 特徴的な活動として、さばいて作る「大人のお魚教室」と親子で楽しむ「お魚がきっと好きになる料理教室」があります。

 大人向けは男性を意識し、アジのなめろうやサバのみそ煮、お刺し身サラダなど、酒のさかなにもなりそうなメニューが並びます。「料理をしてみたい」「どう作るのか知りたい」という男性の声を受けた企画で、「男性にも家で料理をしてほしい」という願いも込めています。

 親子向けも体験型の教室。魚離れが進む昨今、「家庭で魚料理をもっと作って食べてほしい」「魚が苦手な子どもも料理教室や魚売り場の見学を通じて魚を好きになってほしい」と期待を込めています。

 「生きているものをいただくからには、そこに至る自然環境や手に届くまでの流通、そして店頭に並ぶまでの過程を知ることが大切。体験は宝物ですから」と代表の清水智子さん(66)は語ります。

 食育の担い手を育てる活動に取り組む団体もあります。NPO法人とうほく食育実践協会(仙台市)は「食育コンダクター養成講座」を開催しています。

 食育を行うには生産や流通の現場、社会問題についても知っておくことが必要。講座では普段の暮らしからは見えにくい食べ物の本当の姿や「業界の常識」について知って考え直すためのヒントを学べます。

 養成された食育コンダクターは料理教室「食育フェス」(実践協会主催)を企画。毎回、満席になるほど盛況といい、男性も興味を持って参加する例が増えているそうです。

 「食べる」ことは「生きる」こと。おいしい食べ物がいいのはもちろんですが、安全で安心できる食材であるかどうかを考えることも忘れてはいけません。田畑や海から家庭に届き、調理を経てテーブルに並ぶまで、子どもも大人も食材の背景を想像できるようにしたいものです。
(認定NPO法人杜の伝言板ゆるる 大久保朝江)