不登校や引きこもりといった課題にどう向き合えばいいでしょうか。本人が孤立せずに豊かに暮らすには何が必要か。20年以上にわたって支援活動に取り組むNPO法人わたげの会(仙台市)の活動を通じ、一緒に考えてみましょう。

 わたげの会は1997年、仙台市太白区八本松に当事者の若者や家族が気軽に集える「フリースペースわたげ」を開設しました。不登校や引きこもりが注目され始めたものの、ひきこもりは「親の責任」「本人の怠け」「心の問題」と思われていた時代です。

 4年後の2001年、会はNPO法人格を取得して活動を本格化させました。本人や家族対象の個別・グループ相談を軸に、フリースペース、学習サポートなどの居場所づくりを支援。寮生活のサポートや家族勉強会の開催など多様な活動を続けています。

 04年には社会福祉法人わたげ福祉会も設立。より福祉的、医療的専門性を必要とする利用者への支援にも当たっています。

 理事長の秋田敦子さんはNPO法人設立の数年前、ボランティア活動で、不登校の子どもたちに出会いました。印象に残ったのは表情。「目が死んでいるようだった」と言います。

 秋田さんの父親はかつて、星を見上げて「地球上の人みんなの輝きだよ」と語ったそう。「不登校の子どもや高齢者、障害者も、生きづらい人たちがもう一度自分の力を得て輝けるようにサポートしたい」。そんな思いが原動力になっています。

 わたげの会は、非正規雇用の増大などを背景にした「ニート」や中高年のひきこもりなど、変化していく社会的課題に常に向き合ってきました。国の施策は後から整備されていきます。宮城県や仙台市から受託する「ひきこもり地域支援センター」の業務もその一つ。相談対応が中心ですが、秋田さんは「大切なのは相談後の『活動』なの」と強調します。

 それぞれの人生を自ら決める自己決定を促し、社会経験という引き出しをたくさん持たせて社会に送り出す。そのため、独自のサポートメニューを用意しています。

 例えば、人気の学習支援「世の中科」は、フルコースの食べ方を伝えたり、新聞を読んで語り合ったりする時間を設けています。今後はヘルパーの養成講習なども考えているとか。

 中高年の引きこもりについては、両親の高齢化による病気や介護の問題もあります。「万が一ノート」と名付けた取り組みでは、親から子へ、万が一の時の相談先や手続き方法などを伝えるノートを家族と共に作っています。引きこもりの中高年の生きる力を引き出すデイサービス開設も考えているそうです。

 引きこもりに関する国や自治体の支援の柱に「就労支援」がありますが、中高年に対しては必ずしも最善策と言えません。仕事の挫折が原因となった例も多いためです。

 本来の支援の目標は、本人が孤立せず、人の中で豊かに生きられること。それぞれの状況に合った支援策を、本人の自己決定の下、段階的に提供することが求められています。

 制度不足や社会の不寛容さなど、障壁はまだまだあります。それでも秋田さんは「目の前の困った状況をどう打破できるか。地に足を着けて活動していけば、いずれは何かを変えていける」と力を込めます。

 誰もが豊かに生きられる社会の実現へ-。わたげの会はさらに力強く歩みを進めていくはずです。
(宮城県サポートセンター支援事務所 真壁さおり)

NPO法人わたげの会
〒982-0001仙台市太白区八本松1の12の12
連絡先(ファクス兼)022(246)8457
http://www.watage.or.jp