東日本大震災から丸9年。被災者のニーズは個別・多様化する一方、引きこもりや高齢者の独り暮らしなど、見えにくい問題への対応が地域の課題となっています。今後の豊かな地域づくりへ、震災の経験をどう生かすか。多様な担い手と協働するNPOの取り組みを紹介します。

◎認定NPO法人あかねグループ/被災後も配食継続

 仙台市若林区遠見塚に事務所とサロンを構える「認定NPO法人あかねグループ」は、さまざまな世代の住民が支え合い、安心して暮らせるまちづくりを目指しています。

 発足は1982年。特に家庭で介護を担う女性や働く女性の代弁者として活動を始めました。「地域とつながる」という関係性は、38年という長い活動から自然と培われました。

 2000年の介護保険制度開始後は、地域ケア会議に参加。認知症カフェの運営を支援するなど、地域包括支援センターをはじめ専門機関との連携も深めてきました。

 地元の社会福祉協議会や学校と協働し、ボランティアの養成講座や子ども食堂も運営するなど、さまざまな担い手と共に地域課題の変化に対応してきました。

 地元側も、法人に積極的に関与。町内会はあかねグループの評議員として活動を支えています。

 活動を担う会員やボランティアは地元住民が多く、「地域の課題は自分たちの課題と感じている」と言います。地域の支え合いは、表面化しにくい生活課題に気付く人がいなければ成り立ちません。

 あかねグループは高齢者宅への「配食」や語り合う「サロン」などを通し、住民と接しています。「生活者の視点で困り事に気付き、必要な支援につなごう」と考える人たちを地道に育ててきました。

 こうした人たちが震災でも力になりました。スタッフやボランティアが知恵を絞って混乱を乗り越え、配食サービスの継続にこぎ着けたのです。この経験は多様な業務のマニュアル見直しにもつながりました。

 清水福子理事長は「大切なのはいざという時、当事者意識を持って臨機応変に動けるスタッフや地域の関係者の存在」と強調します。

 「課題があればそこに取り組む」「地域にしっかりと根を下ろし、実績を積み重ねる」。あかねグループは団体の原点を大切にしながら、地域から確かな信頼を得ています。

◎ほっとネットin東中田/防災ゲームを活用

 仙台市太白区東中田地区に、地域福祉を推進する「ほっとネットin東中田」という2004年発足の組織があります。社会福祉法人や地域包括支援センター、福祉事業所、NPOなどが参加し、情報共有を図ってきました。

 震災の発生時、避難所に被災住民が殺到する中、「地域の支え合い」はどう機能したのか。組織の事務局・代表を担う「NPO法人FOR YOUにこにこの家」の小岩孝子理事長にお話を伺いました。

 「ほっとネットがあったからできたことがある」。小岩さんは当時の避難所運営などを振り返り、こう言います。

 炊き出しは、小学校や児童館がにこにこの家と連携。新聞販売店の協力で炊き出しの実施や弁当配布のチラシを配ったところ、小中高生がボランティアに名乗り出て、避難所に来られない人たちに物資や弁当を届けてくれたそうです。

 ほっとネットの参加団体は「行ったり来たりして伝え合う雑談」を繰り返し、それぞれの専門性や得意分野を生かし、地域課題の解決策を模索してきました。

 「日常の地道な関係性づくりによる信頼関係があったことで、非常時に誰とどのように協力し合えるか、どこに頼れば良いのかが分かった」と、小岩さんは説明します。

 発災から3カ月後の2011年6月、ほっとネットは避難所運営を振り返る取り組みを実施。そこで生まれたのが「仙台発そなえゲーム」です。

 災害への日頃の備えについて、自分・地域ができることなどを考えるボードゲーム。現在でも防災・減災ワークショップと一体的に行っています。

 ほっとネットには震災後、新たに地区社会福祉協議会や15町内会でつくる連合町内会が加入しました。高齢化や人口減少で、役員のなり手不足や規模縮小の影響を受ける町内会にとっても、地域の関係団体との連携は不可欠です。

 「地域の方々と『伝え合う、支え合う、認め合う』ことを大切に活動していきたい」と小岩さん。お話を伺い、連携の陰に「つなぎ役」の存在があることを実感しました。

 地域でつながりが希薄になった-といわれる時代ですが、2団体の活動から改めて大切だと感じたのは、地域の課題を自身の課題と捉える生活者としての「当事者性」と、他者に敬意を払い、頼ったり頼られたりする「関係性」です。

 「気付き」と「つながり」を育む視点を持ち続け、地域づくりの一員として活動する二つのNPOから多くのことを学びました。
(宮城県サポートセンター支援事務所 真壁さおり)