2019年、仙台市では泉区でのクマの目撃情報が相次ぎ、近隣住民は不安と恐怖で生活に支障を来しました。登下校する児童・生徒ばかりではなく、見守る大人たちも心配でならなかったでしょう。さまざまなイベントの中止もありました。

 本州のツキノワグマは人を襲わないというのが、定説でした。そのため、山菜取りなど山に出掛ける際には、クマを驚かせて襲われることのないよう、人に気が付いてもらえるように鈴を鳴らしたり、ラジオをつけたりして、人の居場所を教えるのが一般的な対処法でした。

 しかし最近は、数年前に秋田県で人を襲って肉を口にするものが現れ、これまでの概念を大きく変えました。ツキノワグマも学習をし、獲物として人を見ることを覚え、それが多くのクマたちに伝わることにより、人間を襲うクマが多く見受けられるようになってきました。

 私が住む宮城県川崎町でも、近所の人が柴犬を散歩していたら、田んぼから突然クマが道路に出てきて、100メートルほどの距離から、走って追い掛けてきたと聞きました。

 動物愛護の観点からは、難しい問題も含まれていますが、捕らえて山に帰したとしても、人間を襲うことを学んだクマはまた山から下りてきて、人々に危害を加えないという保証はありません。

 今回、仙台市では、麻酔銃でクマを眠らせた後、射殺しています。人々の不安と恐怖を考えれば、この行為は仕方のないものだと私は思います。

 クマの出没する地域に住んでいる人と、そうではない地域の人とでは、考え方に大きな温度差ができることでしょう。実際に経験しなければ、不安や恐怖は想像だけのものです。ただ、きれいごとだけでは済まされない現実がそこにはあることを、できるだけ理解してほしいと切に望みます。

 これから先、野生動物との距離は、より近くなるでしょう。人を恐れない野生動物たちは、これから私たちにどんな行動をとってくるでしょうか。手遅れになる前に、何らかの策を講じなければいけない時期にきています。

 昔の野生動物と今の野生動物とでは彼らが持っている知恵も明らかに違うことを考慮した上で、早急に対応することが望まれます。
(獣医師・川村康浩)