ハクビシンは、日本に元々いる在来種ではなく外来生物です。以前、重症急性呼吸器症候群(SARS)という感染症が流行した際には、感染源ともみられました。

 今、外来生物の多くが日本の在来種に大きな影響を及ぼし、生態系は乱れてきています。魚類ではブラックバスが有名ですが、哺乳類ではアライグマ、ヌートリア、タイワンリスなどがよく知られています。その中でもハクビシンは、特に都市部で多く生息している動物です。

 私が仙台市で動物クリニックを開いていた時にも、猫を飼う1人暮らしのおばあさんが「家に何か、すみ着いている」と話していました。害獣駆除の業者が調べるとハクビシンでした。屋根裏に、すみ着いていたようです。

 木登りが得意な雑食動物で、大きさはちょうど猫くらい。夕方になると活動し出すので、薄暗くなった都市部では、多くの人が遭遇しても猫だと勘違いしていることでしょう。鼻筋に白いラインが通っているのが特徴で、尻尾が長く脚が短いです。

 一般人が飼育してはいけないのですが、飼育してもあまり人に慣れることはないようです。

 仙台の知人がアパートのベランダに干し柿を作ろうとつるしていたところ、日に日に柿の数が少なくなったそうです。ある日、ベランダの扉を開けると、正面にあるブロック塀の上にハクビシンがいて、かなりの近距離で見つめ合ったとのことでした。柿泥棒はハクビシンだったのですね。

 鼻筋の白いラインがはっきり確認でき、ブロック塀を登れる動物といったらハクビシンだけです。猫は間違って干し柿をいたずらすることはあるかもしれませんが、大量に食べることはまずありません。雑食動物であるハクビシンは、甘いものが大好きです。

 田舎に引っ越してすぐ、近所の農家の人に畑を荒らす動物についていろいろ話を聞かせてもらいました。ハクビシンは、トウモロコシが生で食べると最高においしくなる頃に、一晩で畑一列を一気に荒らすそうです。また、食べ方がとても汚く本当に甘いところだけ食べていくようです。

 わが家でも昨年初めて、トウモロコシが何者かにやられました。犬がたくさんいるので小型の動物はあまり来ないだろうと安心していましたが、もしかするとハクビシンなのかもしれません。どんな野生動物でも、学習能力を侮ってはいけませんね。

 今度、夕方以降に脚の短い猫を見掛けたら、もう少しだけじっくり観察してみてください。もしかしたら、それはハクビシンかもしれません。
(獣医師・川村康浩)