野生動物の中には、人間に対して非常に警戒心の高い動物と、あまり警戒心がない動物がいます。それは、地域によっても異なるのですが、わが家の周りではキツネは非常に警戒心が高く、イノシシもかなり高いです。サルは集団でいても人が近づいていけば逃げます。それに比べて、タヌキは意外と警戒心が薄く、人が捨てた残飯をよくあさりに来ます。行動も俊敏さに欠け、道路でひかれる動物の中ではネコに次いで、もしくは地域によってはむしろタヌキのほうがひかれています。

 学習した野生動物は実った野菜や穀物を食料とするために人間の住居との空間距離を縮めてきますが、タヌキはそれ以上に距離を縮めてきて、家の玄関先まで来て、人が外に出てきても大して逃げようともしなかったりします。

 このような性格なのと、食性が雑食性なことも加わって、カラスと並び人の残飯を最も食べている野生動物と言ってよいでしょう。加熱調理した食べ物を主食としている動物は、人とペット、動物園の動物、観光地のサルなどですが、ここで共通していることは、この動物たちは花粉症などのアレルギーを起こすということです。

 熱処理した食べ物を基本、食べることがない野生動物はアレルギーになることはまずありません。言い換えれば、加工食品を食べている動物だけがアレルギーを起こしているともいえます。タヌキは、この熱処理された加工食品を多く食べているわけです。それにより、皮膚がアレルギーによる炎症を起こし、弱ったバリアーの皮膚は細菌感染も起こしやすくなるのです。

 最も厄介な皮膚病の一つに疥癬(かいせん)という病気があります。皮膚深くまで潜り込めるヒゼンダニが皮膚の組織をボロボロにしてしまうのです。一生涯皮膚の下にトンネルを掘って生活するのです。毛は抜け落ち、見た目はゾウの皮膚のようになります。全身にヒゼンダニが寄生すると皮膚呼吸もできなくなり、死んでしまうことも多くあります。人の介護施設の現場でも弱った皮膚のお年寄りがかかりやすく問題になっています。体の免疫の約80%は腸で作られるといわれていますが、その腸を疲労させるものは食性に合わない食べ物と熱処理で分子構造が壊れた食べ物です。このような食べ物を食べることにより、皮膚の免疫力も低下しトラブルを起こしやすい状態に変化してしまうのです。

 写真は、毛並みや顔の毛の白く抜けた範囲の広さから、かなり高齢のタヌキだと思われますが、わが家の敷地内に入ってきたところを撮ったものです。動物の撮影は大変難しく、記事の写真には毎回苦労しているのですが、比較的簡単にそれを許すタヌキには感謝です。
(獣医師・川村康浩)