ニホンカモシカという名前は知っていても、実際にその姿をはっきりと見たことがある人は、それほど多くはないかもしれません。見た目で雄と雌の見分けは難しく、共に頭に短い角が生えています。シカという名前が付いてはいますが、シカの仲間ではなく実はウシ科の仲間です。体重が30~40キログラムで、身近ではヤギに最も近い動物です。東北の動物園では盛岡市の動物園でしか飼育していません。おそらく、観光地の触れ合い動物園のようなところでも飼育はしていないと思います。

 以前、宮城県内のとある温泉旅館に泊まった際に、早朝、今、川の向こう岸にニホンカモシカがやってきていると館内放送が流れました。窓の外には、本当にこんな急斜面を登っていけるのかと思うほどの絶壁に近い岩肌を上手に登っていく姿にとても感動しました。ヤギも高いところが大好きで、高さのある台を用意してあげればすぐに登ります。似ているのですね。

 ニホンカモシカは、特別天然記念物に指定されている絶滅危惧種ですが、宮城県では比較的生息数が多く、かなりの住宅密集地内にも出没したりします。山道を車で走っていると、道路脇に出てくることも珍しくありません。狩猟の対象動物ではないためか、人と遭遇してもゆっくりと遠ざかる感じで、あまり恐れるしぐさは見せません。

 昼・夜行性ですが、特に昼間に食事をすることが多いです。春には広葉樹林の葉や草を選んで食べ、秋には枯れ葉やドングリの実を食べます。冬は原生林のササの葉や針葉樹の葉を食べてしのぎます。やはり、ヤギもほとんど同様のものを食べるので、食性もとてもよく似ています。私がヤギを初めて飼育した時、枯れ葉や木の小枝を平気でもりもり食べるのには驚きました。ですから、枯れ葉を食事にできる動物は、雪が積もる季節の前までは、食料に困ることはありません。

 どこかで、毛色が白に近い灰色から黒褐色のふさふさとした毛に覆われた、ヤギくらいの大きさの動物を見掛けたら、それはニホンカモシカの可能性が高いです。そこに、鬼のように短い角が生えていれば、それは間違いなくニホンカモシカでしょう。写真は、宮城県川崎町の山道の道路脇から撮影したニホンカモシカです。
(獣医師・川村康浩)