◎作家のまんぷく帖 大本泉 著

 近・現代の文豪22人の強烈な「食歴」を、作品や関係者の回想文などからたどる。作家以前に人間的な「食いしん坊」であった彼らは、「食」表現の挑戦者だったと著者は言う。「この食にして、この人あり」。文豪の素顔が見えてくる。
 女性解放運動の先導者だった平塚らいてう(1886~1971年)は、玄米食を実践した。「陰陽調和した食べ物」を求め、玄米は陰(カリウム)対陽(ナトリウム)の比率が5対1で人間に最適とする。
 食卓に欲しいものに塩昆布、ごま塩、鉄火みそ、大根おろしとのりを挙げ、その土地で取れたものを食べるマクロビオティックの先駆者であったことが分かる。
 藤沢周平(1927~97年)は、故郷庄内地方の食を愛していた。作品には赤カブ、クチボソ(マガレイ)、ハタハタ、民田ナスなどが登場する。
 藤沢は料理する気もなく、食べ物に対する姿勢は受け身だったが、「物の味もどうでもいいというわけではない。うまいものはうまいし、まずいものは、やはりまずい」と述べている。
 著者は「故郷の日常的な食べ物こそうまい、という藤沢の声が聞こえてくるようだ」と指摘する。
 著者は仙台白百合女子大教授。「作家のごちそう帖」に続く「食と文豪」に着目した第2弾。
 平凡社03(3230)6580=907円。