釜石の風 照井翠 著

 東日本大震災と俳句を作ることで向き合い続けている北上市の高校教諭で俳人の初のエッセー集だ。著者は赴任していた釜石市で震災の惨状に直面し、心が引き裂かれる辛苦を味わった。その後のままならない思いを昇華しようとする著者の「魂の叫び」が伝わってくる。震災の風化にあらがうかのように、研ぎ澄まされた文章が心を射抜く。
 本書は俳誌「藍生」や河北新報朝刊文化面の「微風 旋風」に連載したエッセーなどを収めている。震災後の日々をさまざまな思いで生きる中、震災に対する赤裸々な心情や犠牲者への鎮魂、被災地の現実などをつづっている。
 著者は震災で深く傷付き、名状しがたい思いを抱えながらも、震災後の現実を直視して生きている。その誠実な姿勢と鋭い感性に裏打ちされた文章は胸を突いてくる。 中には涙を流しながら文章を紡いでいる著者の姿が、目に浮かぶような痛切なエッセーもある。震災が人の心に及ぼした影響の大きさを改めて考えさせられる。
 <三・一一神はゐないかとても小さい><春の星こんなに人が死んだのか><迷ひなく来る綿虫は君なのか><降りつづくこのしら雪も泥なりき><回廊を巡るたましひ霜柱>…。著者の俳句も随所に掲載しており、心に響く。
 著者は1962年花巻市生まれ。現代俳句協会員、日本文芸家協会員、「暖響」「草笛」同人。2002年に現代俳句新人賞、03年に遠野市教育文化特別奨励賞、13年に第5句集「龍宮(りゅうぐう)」で俳句四季大賞、現代俳句協会賞特別賞を受賞している。
 コールサック社03(5944)3258=1620円。