「生きる力」を育むグローバル教育の実践 石森広美 著

 著者は国際的な視点を身に付けるグローバル教育を長年にわたって実践してきた。これまでの取り組みを伝える本書の特徴は、教え子の声に数十ページが割かれていることだ。授業で育んだ想像力がそれぞれの豊かな生き方につながっていることが分かり、学びのあるべき姿を問い掛けている。

 ある元生徒による「卒業生コラム」では、身近な加工食品や洗剤などに使用されるパーム油の生産が、自然環境に大きな影響を及ぼすことを学んだ授業が取り上げられている。プランテーション拡大に伴う熱帯雨林の自然破壊が進行していることを知り、元生徒は「日常が違って見えるようになった」と述べている。

 著者が重視する生徒同士の対話の成果も記録されている。学習を終えた翌年度に実施した生徒による振り返りの記録で、「発表の場があって、皆が賛成とか反対とか出し合って、あ、そういう意見もあるなと知るのが楽しかった」との声が紹介されている。「自分と違う人がいて当たり前だと思えるようになった」「悪口を言わなくなった」といった感想もあり、人として成長していく様子も知ることができる。

 小中高校の次期学習指導要領は、知識を活用して課題を解決し、新しい価値を見いだす能力を重視する。国際化の進展もあってグローバル教育は注目を浴びつつあるが、学校設定科目を除けば国際理解の専門科目は存在しない。本書は総合的な学習の時間の積極活用が「確実な方法」と指摘する一方で、地理・公民科など各教科での実践例も示している。

 著者は1970年仙台市生まれ。筑波大第1学群人文学類卒、東北大大学院教育学研究科博士課程修了。仙台二華高でグローバル教育や国際交流を担当する。

 明石書店03(5818)1171=2200円。