オオカミが来た朝 ジュディス・クラーク 著 ふなとよし子 訳

 物語は1935年、大不況下のオーストラリアを舞台に始まる。懸命に働いた父親が急死し、14歳の内気なケニーは6人家族を養うため学校を辞め、工場へ仕事を探しに行く。真冬の早朝、自転車をこぐ身は冷え切り、たき火に当たろうと入り込んだ荒地で、あろうことか、少年殺しの犯人に出くわしてしまう。

 死の恐怖に直面した瞬間、ケニーは気付く。自分の人見知りも、人から笑われている間抜けな入れ歯も、人生においては取るに足らないこと。大事なのは生きて、仕事を見つけ、約束通り、母の待つ台所に戻ることだと。

 窮地を救ったのは、大嫌いな授業で覚えさせられた詩の一節だった。大人になり家庭を持ったケニーは、子どもたちに慈愛を込めて語る。「先のことは分からない。くじけず、前に進むんだ」

 ケニーからひ孫まで4世代の、多感で、成長する力に満ちた子ども時代を描く。貧困、移民、戦争、読字障害、極度の心配性、両親の不仲など、あらがえない環境にあっても自分を励まし進んでいく姿を通じ、ヤングアダルト世代にエールを送る。本書はオーストラリア児童図書賞を受賞。

 翻訳のふなとよし子さんは仙台市在住。中高生向け良書を多く手掛け、「9番教室のなぞ」「楽しいスケート遠足」などの訳書がある。

 福音館書店03(3942)1226=1760円。