侍たちの北海道亘理伊達武士団の挑戦 伊達150年物語の会 編 

 明治初期に仙台藩の亘理伊達家当主伊達邦成と家臣らによって始まった北海道有珠郡(現在の伊達市)への移住は、武士団による北海道開拓事業の中で最も成功した事例の一つとされる。本書は、戊辰戦争で領地を失い開拓に命運をかけた主従の歴史を藩の成り立ちにまでさかのぼる。伊達市、元の拠点である宮城県亘理町の両市町史や各地の博物館資料などを基に物語を紡ぎ、成功の背景にあった歴史の積み重ねを伝える労作だ。

 開拓の先頭に立った邦成は入植時、自ら家臣に指示する「御直書(ごじきしょ)」でアイヌ民族の生活を尊重する旨を述べる。先住民へのこうした配慮の原点は、藩と北海道との過去の関わりの中にあったのではないか。読者がそんな想像をできるよう、江戸時代後期に幕府の命で藩が北方警護に当たった様子も紹介されており、当時から藩士とアイヌの間に交流があったことが分かる。

 邦成や義母貞操院保子が開拓団の精神的な支柱だった一方で、実務の中心となったのが家老の田村顕允(あきまさ)だった。田村らはいち早く西洋式農業に取り組んだことで知られる。砂糖の原料のビート栽培に取り組み、国内初の官営製糖所建設につなげた。そのほか、耕作機など輸入農機具も積極的に使用した。

 連綿と続いていたアイヌの生活を尊重する思いや、西洋文化を吸収しようとする進取の気風。異文化に関わる際の精神も示した本書を読み進めると、約10年で2700人余りが移住を果たした理由を垣間見ることができそうだ。

 A4判235ページで、写真や図版計約200点を使用している。亘理伊達家菩提(ぼだい)寺「大雄(だいおう)寺」(伊達市)の奥村孝善住職や亘理伊達家20代当主の伊達元成氏らでつくる「伊達150年物語の会」が、開拓150年を記念して発行した。

 伊達150年物語の会0142(23)2171=2999円。