臨床宗教師 藤山みどり 著

 死期が迫った人や苦悩を抱える人に対し、宗教者は何ができるのか。本書は東日本大震災をきっかけに誕生した「臨床宗教師」に着目し、新たな役割を探究する。

 臨床宗教師は災害被災地や医療、福祉などの現場で心のケアをする。特定の宗教に偏らず、布教や伝道はしない。東北大が2012年度に養成を始め、18年3月から一般社団法人の日本臨床宗教師会が資格認定をしている。

 著者は仏教系新宗教教団の研究機関「宗教情報センター」の研究員。臨床宗教師を「死の伴走者」と捉え、16年6月から育成や活動の現場を取材し、関係者にインタビューを重ねた。

 誕生の経緯を丹念に追う。震災直後、仙台市では宗教者が犠牲者を弔い、遺族を慰める「心の相談室」を協力して設置。政教分離の原則を守りつつ、公共の場で活動する土台を作った。著者は形骸化した「葬式仏教」への批判が、震災で一変した点を指摘。膨大な数の犠牲者と突然の別れに直面した遺族の存在が「宗教に対する人々の考えに一石を投じた」とみる。

 臨床宗教師の提唱者の歩みもたどる。在宅医療を専門とする岡部医院(名取市)の故岡部健医師。宗教者が患者や家族の不安を取り除く必要性を訴え、構想実現に尽力した。

 活動のモデルには移動式の傾聴喫茶「カフェ・デ・モンク」を挙げた。栗原市の通大寺の金田諦応住職が震災直後に始め、さまざまな宗教者が参加。被災者が悲しみを打ち明ける場を作った。光ケ丘スペルマン病院(仙台市宮城野区)など、終末期ケアでの実践も紹介する。

 一方、布教や伝道をしない活動を疑問視する声や無償の傾聴活動が心理専門職を圧迫する懸念もあるという。著者は課題を踏まえた上で、臨床宗教師が高齢化社会で果たす役割に期待を寄せる。死との向き合い方や宗教の役割を、読み手にも考えさせる労作だ。

 高文研03(3295)3415=2420円。