水晶庭園の少年たち喪に服す電気石 蒼月海里 著

 中学生の樹(いつき)が、鉱物収集家だった祖父が残したハート形の水晶に宿る「石精(いしせい)」の雫(しずく)らと触れ合うファンタジー小説のシリーズ第4弾。祖父と愛犬を相次いで亡くしたショックで、一時学校に行けなくなったことのある樹。雫や他の石精との対話は時に、内面を映し出す鏡となる。鉱物を介して知り合う人を励まし、成長を続ける少年に心が温まる。

 本書には短編3話を収録。第2話「方解石の憂鬱(ゆううつ)」では、地味な同級生影山が登場する。影の薄さにコンプレックスを持つ男子と、ありふれた鉱物である方解石を重ね合わせた展開が面白い。

 水晶を包んでいた方解石が塩酸で溶かされそうになり動揺する影山は、樹や方解石の石精に元気づけられ落ち着きを取り戻す。方解石は色や形が多様性に富み、コレクションの対象にもなっている。そんな石の特徴を知り、これといった取りえのない中学生はあることに気付く。

 第3話「石の中の庭園」では、入院中の恋人を心配する女性が、内部に別の鉱物を含み庭園のように見える水晶を手にする。女性は鉱物販売のイベント会場で出会った樹や水晶の石精と語り合う。自分の心と向き合い、御利益のある「パワーストーン」を必死で探していた心境に変化が表れる。

 第3話で、第1話「喪に服す電気石」に登場する男子高校生が再び姿を現す。鉱物コレクターだった父の消息を明らかにした第1話に続き、高校生の謎が少しずつ分かってくる。さまざまな鉱物が登場し、分かりやすいうんちくも読みどころだ。

 著者は1983年宮城県生まれ、元書店員の小説家。2014年、「幽落町おばけ駄菓子屋」でデビューした。
(安)

 集英社03(3230)6080=550円。