福島の涙 木村孝夫 著

 「作品全てが、福島の涙である」

 これは後書きにある著者の言葉だ。いろいろな涙がある。悲しみ、怒り、悔恨、寂寥(せきりょう)…。東日本大震災から9年余。福島で生き、離れた者たちが流した涙が、本書の言葉で言うなら「心底に鋲(びょう)止めする為(ため)に」20編の詩となった。

 著者はいわき市に生まれ育ち、被災した。以来、被災地に足を運び続ける。本書収録の「海を背負う」は今年、白鳥省吾賞(栗原市主催)優秀賞に選ばれた。審査員の詩人原田勇男さん(仙台市)は「自らの内部と被災地の現在を深く見据えながら、言葉を通して誠実に向き合っている」と愚直な姿勢を評価した。

 捜索現場を詠んだ詩に気取りや飾りはない。<その臭いに/泣いては何度も吐いた>
 別の詩では残された者に思いを巡らせる。<人は誰でも不安の壺(つぼ)を持っている><壺を閉め忘れた人の壺は/一番大きくて重い>
 震災後、さまざまな震災詩が発表された。しかし今も震災に向き合っている人は多くはない。震災にこだわる詩人を、軽侮する者さえいる。

 だからこそ著者は、次の世代に引き継ぐためにも、覚悟を決める。<忘れてはならない/老いても杖(つえ)のように側に置いて>(建)

 モノクローム・プロジェクト0790(35)9058=1320円。