二度消えた甲子園 須江航 著

 今年は新型コロナウイルスで全国の高校球児が甲子園という目標を失った。名門仙台育英高の監督が選手にどう接してきたかを描いた本書は、組織をまとめるヒントが詰まっている。

 著者は同校出身で、2001年春の選抜大会でマネジャーとして準優勝を経験。大学卒業後に母校の教員となり、系列の秀光中教校で軟式野球部を指導した。14年に全国中学大会を制覇。梅津晃大(中日)西巻賢二(ロッテ)ら教え子にはプロ野球選手もいる。

 18年に34歳の若さで仙台育英高の硬式野球部監督に就任してからは、夏の甲子園大会に2年連続出場を果たしてきた。今年は選抜大会の出場権も得ていたが、春、夏ともコロナの影響で大会が中止となった。

 「目の前で起きた現実から何を学び、どう生かすか」。休校で部活動も禁止された時期は、オンラインミーティングで選手の考える力を養った。甲子園出場という大目標を失った球児たちが、どうしたら悔いのないよう部活動を終えられるか。徹底した話し合いで理解を深めることが重要だったと振り返っている。

 野球論では、継投策の重要性に加え、捕手を交代させる「継捕」がもたらす効果をつづる。ベンチ入りやレギュラー争いは明確な基準を設けているのが同校の特長だ。足の速さ、スイングスピード、送球の強さを数値化して選手に示す。健全な競争がチームの強化につながり、誰もが納得できるチーム運営に結び付いている。

 100年を超える甲子園の歴史の中で、東北勢はまだ大旗を持ち帰ることができていない。甲子園はチームの成熟度が問われるというのが著者の持論だ。日々の積み重ねの中で、どうやって日本一への距離を詰めていこうとしているのか。野球部の取り組みがよく分かる一冊だ。(持)

 ベースボール・マガジン社03(5643)3931=1760円。