与えるサルと食べるシカ 〓大和 著

 石巻市の離島、金華山で野生のニホンザルの観察を21年間にわたって続ける研究者が成果をまとめた。著者が金華山に足を踏み入れた当時のサルの研究は、サル同士の関係など群れの暮らしを対象とするケースが中心だった。著者は植物や他の動物とつながるサルの生態にも光を当て、独自の調査結果を積み重ねていく。

 群れ内部の生活といった従来の調査と他の生き物とのつながりを追った生態学、双方を生かしたのが著者の博士論文だ。メスザル17頭を数年間追い、えさである堅果類の豊作年と凶作年を比較し、群れの中の社会的順位と食物摂取量の関係を明らかにした。興味深いのが凶作年では順位の高いサルが食物を独占しエネルギー摂取量の差が拡大したのに対し、豊作年では横並びだったことだ。群れ内部の優劣とエネルギー摂取量の関係が一定ではなく、環境変動に応じて柔軟に変化することを解明した。

 著者の関心は、サルと他の動物の関係にも及ぶ。きっかけはサルのいる木の下にシカが集まる様子を見たことだった。詳しく観察すると、シカは食物の乏しい時季にサルの動きによって木から落ちる葉や実を食べていた。一方でサルには特にメリットがないことも分かってきた。

 サルの観察を軸とした地道な研究は、自然界の命が何らかの形でつながって均衡を保っていることを教えてくれる。

 サルには畑を荒らす害獣という側面もある。人とサルが適切な距離を保つためにどうあるべきか、研究者の役割にも言及する。

 本書には、野生生物を追うフィールドワークの様子がつぶさに描かれている。野外研究の苦労と魅力を知ることができる一冊。

 著者は1977年北海道生まれ。東京大大学院農学生命科学研究科修了。石巻専修大准教授。(安)

 地人書館03(3235)4422=2750円。

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