雨曜日 広瀬ちえみ 著

 仙台市在住の川柳作家による3冊目の句集。前作「セレクション柳人 広瀬ちえみ集」(2005年)以降の作品250句を収めた。

 東北で生きる表現者にとって、東日本大震災とどう向き合うかは避けて通れないテーマの一つだろう。著者の場合は4句で構成する「三月のだった」に昇華された。

 <松林だっただっただっただった>。津波で流され、跡形もなくなった被災地の海岸林。自然の脅威を目の当たりにし、立ち尽くす姿が浮かぶ。<窓だった玄関だったという瓦礫(がれき)>。こちらもかつての日常と震災後の無残な光景との対比が印象的だ。

 <うっかりと生まれてしまう雨曜日>で始まる表題作は、雨に着想を得た句が並ぶ。<物干しの父を取り込むのを忘れ><姉さんの道を外した傘らしい>。川柳作家らしいちゃめっ気あふれる言葉が笑いを誘う。

 同人たちが親しみを込めて「沼のちえみ」「穴のちえみ」と呼ぶように、著者の川柳には人を引きつける力があるようだ。その愉快で機知に富んだ世界観は、あとがきで著者が記したように「夢を見ながらふわふわ生きてきた」ことで紡ぎ出されたのかもしれない。

 著者は「川柳杜人」同人で句誌「垂人」編集人。(長)

 文学の森03(5292)9188=2530円。