族誅 金沢裕 著

 江戸時代初期、仙台藩を揺るがした伊達騒動をテーマにした歴史小説。主人公の原田甲斐(かい)は善玉だったのか悪玉だったのか、が主題ではない。タイトルにあるように騒動で処分が出た後、原田家がどれほど過酷な一族滅亡の運命をたどったかに本書の読ませどころがある。

 4代藩主亀千代が幼君であることを理由に、伊達兵部(藩祖政宗の末子)と田村右京(政宗の孫)による後見政治が行われた。愚直な甲斐は、二つの勢力に挟まれながら、兵部の専横政治に引きずられていく。大老酒井雅楽頭(うたのかみ)邸で審問中、自暴自棄になって刃傷沙汰に及び、斬殺された。

 「子息4人は切腹、男孫2人は殺害」が原田家に対する処分であった。国元の船岡では「どうせ死ぬなら一戦交えて華と散ろう」「静まれ、早まったことは慎め」と大混乱。甲斐の母・慶月院は持仏堂にこもり、「不忠不義の大罪を犯して先祖の名を落とした。何の供養があろうか」と半狂乱に陥った。妻・律は「武家の世界は何と非情なもの。子や孫に何の罪があるというのか」と、愛する家族を絶望の淵に追いやった者を憎んだ。

 2人の男孫は、蔵王山麓の平沢にある藩重臣の館に、乳母と守り役と共に預けられた。鬼ごっこをしていた5歳の孫を、守り役が背後から口をふさぎ、介錯人が胸を突き刺す。守り役は地べたに崩れて嗚咽(おえつ)した。1歳に満たないもう1人の孫。乳母を追い掛け泣きだした子は、鼻と口を押さえられた。「許せ…」と介錯人は床に両手を突いて涙した。

 著者は1943年仙台市生まれ。元会社員。「伊達騒動の処分が出た後のことを書いてみようと思い、関係する寺々を訪ね資料を集めた」と語る。(昌)

 金港堂出版部022(397)7682=1620円。