身体構造力 伊東義晃 著

 脳の命令が神経を伝って筋肉を動かし、人間の運動を成り立たせている。われわれはこう思いがちだが、実際は脳だけに頼っては姿勢の維持すら難しい。仙台市中心部で整骨院を営む柔道整復師の著者が、直立二足歩行を得た人類だけが持つ人体の「構造の力」を詳説する。

 本書はそれにとどまらない。身体は脳の支配下にあるとする「大脳中心主義」を疑う哲学書でもあり、痛みを抱えた「整体難民」に、玉石混交の整体師が群がる現状を批判するジャーナリズムも展開する。

 身体の構造の力は重力によって最大限に発揮される。そのため、運動不足が常となっている現代人は正しい骨格を維持できなくなっているという。結果、めまいや腰痛が「不良姿勢による生活習慣病」として引き起こされると、著者は指摘する。

 人間の二足歩行は、骨盤にある二つの「仙腸関節」が滑らかに動くことで可能になる。だが運動不足でいると、重心のずれた歩き方となり、腰や脚の筋肉が慢性的な緊張状態を強いられて、痛みの元になる。椎間板ヘルニアなども、痛みの原因ではなく結果。メカニズムを正しく機能させる姿勢改善策として、足底の内側に重心を置き、たくさん歩くことが助言されている。

 「理性」「個人」を確立した近代において人は頭脳を全能の存在と信じるようになり、現代日本人は「身体を忘れ、構造の問題を心で解決しようとする病」に冒されているとの警鐘は重く響く。自らの体と向き合うことなく、向かう先は「コンビニ整体」の優しい施術。痛みは繰り返される。

 現代医療で救われない大勢の患者がいる。本書はそうした人を救うべく、東洋医学や民間療法の精神を改めて確認し、担い手となる整体師の誇りを問うている。(浅)

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