法廷遊戯 五十嵐律人 著

 司法試験に合格した著者が手掛けたリーガル・サスペンス。法制度や公判の実際を知るだけに、いわゆる「法廷もの」に立体感が出ていて読ませる。衝撃的なラストに向かう最終章は臨場感に富み、疾走感も加わって手に汗握る。被告が有罪か無罪かを決める刑事手続きを扱っているのに、読後は両者の間に横たわるグレーゾーンについても考えさせられる。

 物語は「法都大」の法科大学院に通う久我清義と織本美鈴、結城馨の3人を中心に展開する。家庭の事情から児童養護施設で育った久我は、後に入所してきた織本をトラブルから救うために傷害事件を起こしてしまう。久我が更生の過程で司法制度に触れたことで2人は法律を学ぶことを志し、進学後に結城と出会う。

 学内の模擬法廷では、既に司法試験に合格している結城が裁判官役で学生間のもめ事を裁く「無辜(むこ)ゲーム」が流行していた。久我と織本はこの中で、過去の事件などを巡りゲームを仕掛けられる。この時は大きなトラブルに発展することもなく収束し、久我と織本も司法試験に合格、3人ともそれぞれの道に進むが、しばらくして、このうちの1人が模擬法廷で死亡する。別の1人は殺人罪で被告に、残る1人は被告の弁護人となり、被告の裁判員裁判を通して思わぬ事実が浮かび上がっていく。

 「手渡された爆発寸前の爆弾を、ドライバー1本で解体しろと命じられる。無罪主張をする弁護人に求められるのは、そんな作業だ」など、法律家の卵ならではの表現が全編を支える。一方、違法性阻却事由や構成要件該当性といった専門用語が頻出するシーンもあり、とっつきにくさが残る。

 著者は盛岡市出身、東北大法学部卒。本作でメフィスト賞を受けた。(桜)

 講談社03(5395)5817=1760円。