飲食店などに受動喫煙対策を義務付ける改正健康増進法が4月1日に全面施行される。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う自粛傾向で客足が遠のく中、各店は日本たばこ産業(JT)から助言を受け、分煙か禁煙かの厳しい経営判断を迫られている。
(報道部・古賀佑美)

■設備費負担に

 仙台市青葉区の飲食店で2月下旬、JT社員による分煙コンサルティングがあった。店を運営する企業の担当者が「正直、まだ迷っています」と切り出した。

 店舗では企業の宴会が多く、現在は喫煙可能。完全禁煙にすると予約が減って売り上げに響く恐れがある。喫煙ブースを設けて分煙にすれば、100万円以上の設備費に加えて維持管理費もかかり、経営を圧迫しかねない。

 喫煙対応は人手の確保も懸念材料の一つだ。経過措置対象の小規模店は20歳未満の客が入れない上、従業員も働けなくなる。担当者は「学生アルバイトの多くが大学入学時に入り、4年間働く。途中からバイトを変えてもらえるのだろうか」と頭を悩ませる。

■コンサル低調

 JTの社員は改正法の趣旨を説明し、分煙設備費に対する上限100万円の国の助成制度などを紹介。喫煙場所として検討する個室の広さや設備を確かめた。

 JT東北支社によると、東北6県の飲食店に対する分煙コンサルは1月から増え始めたが、今月25日現在で162件にとどまる。そのうち仙台は79件だった。

 東北支社リレーション推進部の重芳明社会環境・CRM推進担当部長は「まず法律への理解を深めることが大切だ。屋内を禁煙にすることで、路上喫煙やたばこのポイ捨てが増えるのは望ましくない。分煙環境の整備に努める」と語る。

■届け出少なく

 小規模既存店が喫煙対応を続ける場合、「喫煙可能室設置届出書」を行政に提出しなければならない。仙台市への届け出は24日までに334件。市内の飲食店1万3000店のうち、7割の約9000店が小規模店とみられ、全ての店が届け出たかは疑問が残る。

 市健康政策課の木村ミカナ課長は「長い歴史がある喫煙を規制することへの理解には時間がかかる。新年度も説明会を開き、地道に周知を図りたい」と話す。

 罰則はあるものの、全ての店が受動喫煙対策を実施しているかどうか監視はできず、市は4月以降、「市民から通報を受ければ店の状況を確認する」という。

 改正法は店が喫煙可能な場合、入り口などに標識を置くことも義務付ける。宮城県内の約5000店が加盟する県社交飲食業生活衛生同業組合(仙台市)は独自に喫煙可能、全席禁煙、分煙のステッカーを作製し、加盟店に配布している。

 冒頭の飲食店は結局、新型コロナの影響で宴会予約がなくなったこともあり、来月1日から当面、全面禁煙とすることに決めた。

[改正健康増進法]受動喫煙を防止するため、一定の場所を除き屋内での喫煙を禁止する。公共施設を含む第1種施設が2019年7月に先行して敷地内禁煙となった。飲食店を含む第2種施設は禁煙にしない場合、喫煙専用室か、加熱式たばこ専用の飲食可能な喫煙室を設ける。煙の流出防止のため、入り口に風速毎秒0.2メートル以上の措置が必要。経過措置として資本金5000万円以下、客席面積100平方メートル以下の既存店は掲示、届け出の上、喫煙できる。経過措置の期限は決まっていない。