悲劇の教訓を今度こそ無駄にするな-。教育のトップに重い使命が託された。

早期発見へ決意

 2017年4月、仙台市青葉区の折立中2年の男子生徒が自殺した問題で、市教委の第三者機関は9日、いじめ8件と体罰2件を認定し、自殺の一因になったとする答申を提出した。
 受け取った佐々木洋教育長は答申の厳しい指摘をかみしめ「いじめはまだある。早期発見、早期対応。これを現場の先生方に浸透させる」と決意を語った。
 市内では14年9月の泉区館中、16年2月の同区南中山中、そして折立中と3件続けて、男子生徒がいじめを苦に自殺する問題が発生した。市教委は抜本的な再発防止策と教員の意識改革を強く迫られた。
 館中の問題以降、全市立中にいじめ対策専任教諭を配置。教員の目が行き届く35人以下学級を広げるなど対策に取り組む。だが、17年度のいじめ認知件数は1万4132件で、他政令市と比べ高い水準だった。
 今年4月、郡和子市長が公約に掲げた「いじめ防止条例」が施行された。学校だけでなく、保護者や地域にもいじめ防止の責務があると定めた点が特徴だ。
 市PTA協議会の志賀猛彦会長は「地域の目を入れて子どもたちを守る観点は重要」と理解を示すが、市連合町内会長会の伝野貞雄会長は「学校はいじめの現状を地域に伝えない。協力は惜しまないが、何をすればいいのか」と戸惑う。

旧態依然の対応

 いじめ防止の取り組みは緒に就いたにすぎない。最近はさらに、子どもへの虐待事件が顕在化する。
 今年1月、生後約2カ月の乳児を放置して衰弱死させたとして、青葉区で母親が逮捕された。その後も中1長男に殴る蹴るなどした、小6長女の頭を踏みつけた、小2長男の首を絞め投げ付けた、4歳長女を殴った-など親による虐待事件が立て続けに起きた。
 7月には2歳の長女を3日以上放置して死なせた母親が逮捕された。市児童相談所(青葉区)はこれら大半のケースで支援に乗り出していたが、事件を食い止めることはできなかった。
 「仙台と言えば少し前はいじめが代名詞。最近は児童虐待の街と言われる」
 ある教育関係者が残念そうに打ち明けた。郡市長は「子育てするなら仙台」と明るく話すが、ここ数年間、街には負のイメージがこびり付いて離れない。
 仙台白百合女子大の氏家靖浩教授(教育相談)は、教育や子育ての環境の著しい変化を指摘し「市や市教委の旧態依然とした対応が、痛ましい事態を招く一因になった」と分析。「子どもの立場で考えられ、本当に命を守れる人材の育成が急務」と警鐘を鳴らす。
(報道部・田柳暁)

[仙台市立中のいじめ自殺問題]2014年9月に泉区館中で1年の男子生徒=当時(12)=、16年2月に同区南中山中で2年の男子生徒=同(14)が、いじめを苦に自殺。17年4月には青葉区折立中で2年の男子生徒=同(13)=が教諭から体罰を受けた上、いじめを訴えて自殺した。市教委は3件とも第三者機関、市いじめ問題専門委員会で事実解明を進めた。南中山中の件は遺族が再検証を求め、再調査委も設置された。いずれの答申も学校のいじめに対する認識の甘さ、事態を過小評価する姿勢を厳しく指摘した。