■職人の勘と心意気伝える 工藤さん

 「やる気、情熱がなければ生まれなかった商品。本当によくやった」。遠野市綾織町で40年以上漬物製造販売を手掛ける工藤古寿(ひさとし)さん(76)は、若人の活躍に目を細める。生徒が研究に行き詰まっていた時、ヤマブドウ漬けの試行を提案した本人だ。

 助言を求めにきた生徒らに、工藤さんは自信を持って答えた。職人の「勘」。ヤマブドウがカブの紫色を引き立て、かつ酸味が素材本来のうま味を引き出すと考えた。「野菜の味を生かしながら、多様な味を生み出せる。それが漬物の魅力」。心意気は、生徒に確かに伝わった。

 生徒は一から漬物を学び、砂糖や塩分の配合を何度も試行錯誤。販売実習先で試食者から評価を聞き、味のバランスを調えた。

 工藤さんは「食卓に合う漬物の味は時代とともに変化する。自分はあくまで助言だけ」と一歩引いた位置から応援。「消費者の顔を思い浮かべながら、一つ一つの素材に心を込める。逆に漬物職人としての原点を思い出させてくれた」と感心する。

■実直な姿勢に農家も感服 高橋さん

 生徒の実直な姿勢は、地域の農家にとっても大きな刺激だ。遠野伝統野菜研究会(佐々木定則会長)の高橋義明副会長(56)は「柔軟なアイデアと行動力。今やこちらが追い掛ける側かもしれない」と感服する。

 同研究会は、琴畑カブの再生プロジェクトを当初から支援。かつての生産農家がノウハウを伝授し、農機具も貸与。店頭販売の応援にも駆け付けるなど地域を挙げた「応援団」を自認し、大きな期待を寄せてきた。

 ここ1年で急速に脚光を浴びた琴畑カブ。高橋さんは「地域住民に身近な食材として認知してもらうことが、販路拡大への第一歩」とみる。「地元店舗や消費者の応援がないと、一過性で終わってしまう。生徒が代替わりしても継続して研究を続けられる環境を整備できれば」とさらなる後押しを誓う。