気仙沼市階上中3年の小松心咲(みさき)さん(15)が海に手を向け、後輩たちに語り掛けた。「あそこに見える慰霊塔のてっぺんまで波が来て、屋上にいた人はここも駄目じゃないかと思ったそうです」

 市東日本大震災遺構・伝承館で8日、階上中生徒の語り部活動があった。2、3年生の有志20人が1年生33人を連れ、津波の痕跡が残る遺構の気仙沼向洋高旧校舎を案内した。

 小松さんは当時5歳。幼稚園で揺れを感じ、先生たちと高台に逃げた。中学校に上がると「記憶が残る最後の世代」と言われ、震災を意識するようになった。

 昨年10月、初めてガイドを務めた。「震災の経験が少なく、最初は自信がなかった」。語り部の話をメモし、分からない点は質問し、不足する知識を補った。

 活動を支える伝承館の佐藤克美館長(52)は、生徒たちの成長を喜ぶ。今年1月、原爆投下の悲惨さを語り継ぐ広島市を視察し、活動の方向性が間違っていないことを確信した。

 原爆資料館では被爆者の証言はもとより、戦争を体験していない戦後生まれのガイドたちが使命感を持ち、館内の展示を説明する姿が強く印象に残った。

 案内してくれた女性ガイドは、被爆者の証言を受け継ぎ「被爆体験伝承者」としても活動していた。被爆者の平均年齢は3月末現在で83.3歳。高齢化に危機感を抱いた広島市が2012年度に始めた。

 3年間の研修で被爆者の体験や生い立ちを自分の言葉で説明できるまで理解し、被爆者本人の了承を得て「伝承者」に認定される。

 広島に学んだ佐藤さんは「『分からないから、経験していないから伝えられない』ではない。親や祖父母の体験を聞き、自分たちの口で伝えていくことが大切だ」と語り継ぐ意義をかみしめる。

 震災の年に生まれた子どもたちは小学3、4年生になった。経験がない世代への継承は重みを増す。

 釜石市で1月に発足した伝承団体「夢団」は釜石高2、3年生の有志約30人で組織する。防災や伝承を活動テーマに掲げ、次世代への継承に力を入れる。

 リーダーの3年太田夢さん(18)は「1人でやろうとしても1回限り。団体をつくり、世代交代しながら活動を引き継いでいければいい」と語る。

 活動を支える釜石市の一般社団法人三陸ひとつなぎ自然学校の伊藤聡代表理事(40)は「被災地での伝承は局面が変わった」と話す。

 震災後しばらく、地元の子どもたちに対して震災の話をできる雰囲気はなかった。変化は7年目。高校生が紙芝居で体験を語り始め、空気が少し和らいだ。そして今年、新たな流れとして夢団が生まれた。

 若い世代から、次の世代へ。伊藤さんは手応えを感じている。「防災は人材育成そのもの。発想豊かな若いプレーヤーがどんどん育っている」

 第1部は吉田尚史、菊池春子、坂井直人、田柳暁、佐々木智也、鈴木拓也が担当しました。
=第2部は8月中旬に掲載