パソコンに向かい、思いを込めて語り掛けた。

 「将来にわたり大川小事故を語り継ぐため、鍵を握るのは若者たちです」

 佐藤敏郎さん(57)=石巻市=が9月21日、オンラインで、首都圏にいる早稲田大の学生19人に向けて語り部ガイドをした。

 石巻市大川小で6年の次女みずほさん=当時(12)=を失った。2016年の設立当時から大川伝承の会の共同代表を務める。

 佐藤さんがオンライン語り部を本格的に始めたのは3月。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、大川小の現地ガイドのキャンセルが相次いだからだ。

 「語り部を聞いてくれる人の裾野が広がった」と、距離や世代の垣根を越える新しい手法を前向きに捉える。全国の大学や教育関係者だけでなく、現地に足を運びにくい子育て世代とのつながりも深まった。

 「オンラインでの出会いがきっかけとなり、大川小を訪れる人もいるはずだ」と佐藤さんは期待する。

 大川小津波事故訴訟の判決確定から1年。遺族はそれぞれの置かれた立場から発信する。

 「一人一人の人生に意味がある。娘が生きた4433日は決して無駄ではなかった」

 名取市みどり台中校長の平塚真一郎さん(54)=石巻市=が9月16日、名取二中を訪れ、3年生124人に「未来の命を守るために」をテーマに語った。

 6年の長女小晴さん=当時(12)=を亡くした。「胸が張り裂けるような気持ち」。わが子を失った親の心情をこう表現し「家族にとって一人一人が、かけがえのない存在だ」と命の大切さを説いた。

 「小晴が持ってきた縁」と考え、講演の依頼は断らないと決めている。判決確定を受け、宮城県が設置した「学校防災体制在り方検討会議」の委員も引き受けた。遺族唯一のメンバーだ。

 判決確定後、遺族と現役の教員という両方の立場で発言する意味をより深く意識するようになった。いまだに学校現場では、大川小事故の話題がはばかられる雰囲気を感じるからだ。

 「大川小事故をオープンに話し合えるようにならないと、教訓として学ぶことはできない。口火を切るのは、遺族でもある自分の役割かもしれない」

 11月4日、県教委が大川小で初めて実施する新任校長向けの研修会で思いを語るつもりだ。

 大川小訴訟の原告遺族たちも発信を続ける。コロナ禍の影響で延期された裁判の結果報告会を年度内に開くことを検討している。

 報告会では全国の支援者に感謝の気持ちを伝えるとともに、事故の検証、確定判決の波及効果などを話し合う予定だ。

 原告代理人を務めた吉岡和弘弁護士(72)は「津波訴訟がなければ、大川小事故は忘れ去られていたかもしれない。勝訴に満足せず、教訓を50年後、100年後に残すため、伝え続ける努力をしたい」と話す。