プロ野球東北楽天の泉犬鷲(いぬわし)寮(仙台市泉区)の寮長に、昨年まで日本野球機構(NPB)審判員を32年間務めた中村稔さん(55)が就いた。審判から球団職員への転身は極めて異例。若手選手と生活を共にする立場になった中村さんは「自分の子どもよりも若い選手ばかりで父親代わりの存在になりたい。寮長室のドアはいつも開けておく」と選手との触れ合いを楽しみにする。

 名古屋市出身の中村さんは愛知・名古屋電気高(現愛工大名電高)で内野手として活躍。高校の同期には投手だった工藤公康さん(現ソフトバンク監督)がいた。1982年にドラフト3位で日本ハム入りし、5年間在籍した。87年にプロ野球の審判員となり、昨シーズンまでに計2876試合の審判を務めた。旧知の長島哲郎東北楽天ファームディレクターから寮長就任を打診され「長年の経験を生かしたい」と快諾した。

 東北楽天とは縁が深い。最後の球審は昨年9月24日に楽天生命パーク宮城(宮城野区)であった東北楽天-西武の試合だった。2013年9月26日の西武-東北楽天(西武ドーム)では、当時東北楽天にいた田中将大投手(現ヤンキース)が最後の打者を空振り三振に仕留め、初のパ・リーグ優勝を決めた瞬間を球審として見届けた。

 この九回に田中の救援登板を告げに来た東北楽天の故星野仙一監督に「頼むぞ」と言われ、「職務上何もできないのに、うっかり『分かりました』と答えてしまった」と懐かしむ。

 審判員として数々の名投手を見た経験から若手投手に伝えたいことがある。「大胆に真ん中に力強い球を投げればそう簡単には打たれない。投球を複雑にする必要はない」

 選手、審判員として37年間培ったプロの目で、1軍で活躍できるように選手の成長を見守る。