試合開始は午前10時。かなり早めの5時半に来たのに、球場前は行列ができている。先頭の女子高校生は「4時半から」と言う。
 18日の春季東北地区高校野球岩手県大会1回戦。仙台から約330キロ離れたのどかな野田村に2000人以上が押し寄せた。注目は最速163キロを誇る大船渡・佐々木朗希投手だ。
 試合は別の右腕が完投し、延長十回の末サヨナラ負け。「このままでは圧倒的な(佐々木の)ワンマンチームになる。そんなチームでいいのか」。国保陽平監督は目先の1勝より夏の岩手大会を見据えたチームづくりを優先した。
 「骨格、筋肉などまだ体が球速に耐えられない」。170キロ超えも夢ではない剛腕の将来を考えた深慮もあった。
 ただ、観客は物足りなかった。「被災地で過ごし、立派になった先輩を見たくて来た」と一番乗りの女子高校生。大船渡市の同じ中学校で1学年下だった16歳が「復興のシンボルになってほしい」と願うように、佐々木は「令和の怪物」よりも「被災地の星」だからだ。
 今月、交通の便が良くない三陸地方で大船渡は3試合を行い、計7000人以上が集まった。多くが彼女と同じ思いだろう。夏の甲子園を目指す岩手大会は7月。今度こそは剛速球が見られると誰もが願っている。(金野正之)