全国高校野球選手権の岩手大会が11日、開幕する。東日本大震災の被災地から甲子園へ。高校野球史上最速の時速163キロを記録した「令和の怪物」佐々木朗希投手(17)=大船渡高3年=が、最後の夏に挑む。

 野球を始めたばかりの小学3年だった2011年3月、あの震災が起きた。
 陸前高田市の自宅は津波に流され、父と祖父、祖母の3人を失った。残された一家4人で隣の大船渡市へ移り住み、野球仲間は散り散りになった。
 大船渡一中3年で既に140キロ超の球速をマーク。県内外の甲子園常連校が注目した。あまたの誘いを全て断り、自らの意思で大船渡高に進んだ。
 「被災地から、被災した自分たちが、甲子園に行く。それが支援してくれた人たちへの恩返しになる」。そう考えた。
 幼なじみの及川恵介捕手(18)とバッテリーを組む。16年の夏に地元選抜チーム「オール気仙」で、高田一中の3年だった及川と再会を果たした。チームは中学野球の岩手大会を制し、東北大会でも準優勝した。
 野球は中学まで。そう考えていた及川に「また一緒にやりたいな」と声を掛け、翻意させた。投手と捕手。マウンドとホーム。白球で数え切れないほど繰り返してきた2人の対話は「恐らく、この夏が最後になる」(及川)。
 野球に打ち込めば、震災のつらさや家族を亡くした悲しみを紛らわせられる。そう教えてくれたのは兄だった。
 兄も大船渡高で甲子園出場を目指したが夢破れた。「何が何でも甲子園の土を踏む。兄の分も勝ってみせる」。見守る母と弟にそう誓う。
 大船渡高は15日、花巻球場(花巻市)で遠野緑峰高との初戦に臨む。岩手は過去24年連続で私立校が甲子園に出場している。
 それでも「一丸で頑張れば、強い私立にも勝てる」。脳裏に浮かぶのは昨年夏の甲子園。準優勝の快進撃を演じた秋田代表の公立校金足農高の勇姿だ。「自分たちも勝ち続け、震災に遭った岩手、東北を元気づけたい」。そう誓う。