能あるタカは爪を隠す、ようにも見えた。2日に一関市であった高校野球大船渡の練習試合。高校史上最速の163キロを記録し「令和の怪物」となった後の佐々木朗希投手を初めて見て、拍子抜けした。体への負担を心配するチーム方針で全力投球を控えていた。
 確かに変化球主体で老練と言える。でも、見たいのはうなりを上げる速球だ。唯一投前ゴロ処理の一塁送球は度肝を抜く球だった。取材席で隣の記者と「実は今のが一番いい球じゃない?」と、つい苦笑いした。
 元巨人の江川卓さんが日本テレビの番組「Going!」の取材で来ていた。栃木・作新学院高時代、公式戦で完全試合と無安打無得点試合を計10度以上達成した元祖怪物だ。感想を求める報道陣に囲まれてこう切り出した。
 「むしろ教えてください。今日は本調子ですか?」。力を抑えた投球に首をかしげた。その夜の番組では「今日のベストボールは投前ゴロの一塁送球です。全力で投げたいのに投げられないうっぷんを晴らした」と、右腕の葛藤を推察していた。
 江川さんは報道陣に「今から全力投球しないと夏に間に合わなくなる」と話した。「早く本気出しましょうよ」。昭和の怪物は、令和の怪物にこう伝えたかったのかもしれない。(金野正之)