仙台のFW西村が海外に移籍するという一報には驚いた。交渉先のロシア・プレミアリーグのCSKAモスクワは欧州チャンピオンズリーグに何度も出場している強豪。J1で日本人トップタイの11点を挙げる活躍の情報がすぐ世界中を駆け巡り、若い選手が海外からオファーを受ける時代になったと思うと感慨深い。

<攻撃陣活性化へ>
 リーグ戦5位以内を目指す今季、残り10試合を戦う上で西村が抜けるのは痛いだろうが、個人的には前向きに捉えている。攻撃陣の活性化へ期待できる三つの要素があるからだ。

 まずは野津田の復帰。7月に右太もも肉離れで全治6週間の診断を受けて離脱中だが、そろそろ戻ってくる。中盤でボールをつなぐ力があり、攻撃の組み立てには欠かせない存在。高い位置でしっかりとボールを保持して精度の高いラストパスを前線に供給できれば、選択肢となる技術のある石原や阿部、高さが武器のハーフナーらFW陣もさらに生かせるはずだ。

 もう一つは新人FWのジャーメインの成長。25日の川崎戦で13試合ぶりに先発出場し、スピードを生かして相手のDFラインの裏を積極的に狙っていた。課題はあり、一人で攻撃を完結しようとしているところだ。無理なときは前線でためをつくって周囲の選手のサポートを待てるようになれば、攻撃の厚みが増すと思う。ジャーメインの良さを生かしながら、仙台の攻撃の形に合わせようとすることも大事だろう。阿部や西村はそれができている。

 最後はMF関口の存在。自分が仙台で指導していた当時から元気な男だったが、今もおとなしい選手が多いチームの中で良いカンフル剤になっている。32歳の現在でも上下動が激しいウイングバックで走り回るタフさに加え、相手のプレッシャーに慌てずプレーに落ち着きと安定感が増し、攻撃の起点になっている。トップ(FW)でボールを収める役割も十分できると思う。

<守り切る力不足>
 一方、守備では気になる点がある。1試合平均得点は1.38とリーグ6位タイと好調だが、失点も1試合平均で1.50と5番目に多い。自陣に下がって守備陣形が整っていれば大丈夫だが、攻撃に出ようとした際のボールの奪われ方が悪くて失点している。

 カウンターを浴びるなど人数が手薄なときに守り切る力が足りない。攻撃に入るスイッチをチーム全体で共有する大事さは分かっていると思うが、まだ緩い。そこは相手もしっかり分析している。前線に残っていたMF中村に決勝点を奪われた川崎戦がまさにそうだった。

 残り10試合は西村を欠く戦いになりそうだが、就任5年目で熟成した渡辺監督の戦術が簡単に崩れることはないだろう。「西村がいないから悪くなった」と言い訳をしないためにも結果が必要。好調を維持し、西村に海外で安心して戦ってもらいたい。
(日本サッカー協会ナショナルトレセン東北チーフコーチ)