先日、磐田のMF太田吉彰(36)が現役引退を発表した。仙台でも2010年から5季プレー。ユアスタ仙台でサポーターの後押しに応えるように右サイドを駆け上がった。その勇姿に数々の思い出がよぎり、中でも忘れられないシーンがよみがえった。

 2011年4月23日のアウェー川崎戦。東日本大震災で中断していたリーグ戦の再開初戦だった。0-1の後半28分、倒れ込みながら同点ゴールを決め、しゃがみ込んだままガッツポーズ。「みんなの気持ちが押し込んでくれた」。ほとばしる執念で、被災の悲しみから再び立ち上がろうとするサポーターを喜ばせた。

 その後も「被災地の希望の光」(当時の手倉森誠監督)を目指すチームを支えた。12~14年はリーグ戦全試合に出場したが、「途中交代が多い。フルで出させてもらえる力が自分には必要」と満足しなかった。筋力アップなど試行錯誤を重ねて体を磨き上げた。

 5年前、仙台を退団する際に「チームは変わるが、これからも宮城、東北の復興のためにできることをしたい」という言葉を残した。プロ生活18年。下部組織で育った磐田以外は仙台のユニホームしか袖を通していない。馬力あふれるドリブラーは、まさに「希望の光」だった。(剣持雄治)