ごろごろと似たような石が磯場にずらりと並んでいる。びっしりと表面を覆っているのは、海藻のフクロフノリ。
 冬場、3センチほどに伸びたら旬。晴れていれば津軽海峡の向こうに北海道の山々が望める浜の漁場で、誰も顔を上げず、中腰のままひたすら手でむしり取る。
 石はまるでこけむしたような臙脂(えんじ)色。大昔から海岸にあったように見えるが、実はフノリを付着させようと、わざわざ運んで海に投入したものだという。
 青森県風間浦村下風呂の「布海苔(ふのり)磯」は、いわば海の畑。護岸工事の捨て石にフノリが付いているのを見つけた地元の海産問屋が、全国に先駆けて始めた。明治の初めだった。
 今の石はその何代目かの跡継ぎ。いろいろな所から運んできたが、「海の近くの石より、なぜか山の石の方がフノリが育ちやすい」と村産業建設課の木村祐生さん(42)。思いがけない自然のからくりが、豊かなフノリを織りなす。(文と写真 写真部・庄子徳通)

[メモ]風間浦村には下風呂、易国間(いこくま)、蛇浦の3漁協が管理する「布海苔磯」が計8カ所ある。フノリの収穫時季は1月~5月上旬で、一昨年のフノリ水揚げは3漁協合わせて約14トンだった。毎年2回、一般の人向けの「布海苔採り体験ツアー」が開かれる。