◎寺山修司論 守安敏久著

 寺山修司(1935~83年、青森県弘前市出身)は身近なようで遠い不思議な存在だった。
 寺山の演劇や映画、競馬評にのめり込んだのは氏が病と闘っていたころだったが、トレンチコートで津軽訛(なまり)のブツ、ブツと話す様は、そのナイーブな内面をうかがうに十分だった。
 子どもの時分に脳裏に焼き込まれた、テレビ漫画「あしたのジョー」の主題歌や、カルメン・マキの「時には母のない子のように」が寺山の作詞だと後に知って驚いたこともある。
 歌人、詩人としてもメディアを縦横無尽に駆け抜けた寺山だが、本書はラジオ、テレビ、映画、演劇に焦点を当て、「東京大学新聞」編集部在籍時に寺山本人にインタビューした一員でもあった寺山研究家による膨大な論考集だ。
 「規範から積極的に逸脱していくことで、風変わりで誇大な様式を生み出す」バロックの系譜と見立て、寺山の「悪趣味にもまがう風変わりな」作品世界を読み解く。
 社会問題化したラジオドラマ「大人狩り」、「家」の桎梏(しっこく)と解体に向き合う青年の怨恨と反抗の感情が吐きかけられた映画版「書を捨てよ町へ出よう」、演劇の高度な到達点となった「レミング」、ガルシア・マルケスの「百年の孤独」の啓発を受け遺作となった映画「さらば箱舟」…。制作の経緯、哲学的観点、社会の反応、時代考証を含め緻密に検証されていく。
 こうした本論のほか、前述の東京大学新聞が行った寺山インタビュー(81年発行)や、寺山作品を題材とした教科書、入試問題、解読法などを収め、研究書として押さえどころも満載。インタビューでは、自身のまねをするタモリに対しての分析評まであり、興味深い。
 著者は1959年岡山市生まれ。東京大大学院人文科学研究科国語国文学専攻博士課程単位取得退学。宇都宮大教授(日本近代文学)。著書に「メディア横断芸術論」など。
 国書刊行会03(5970)7421=5832円。