左腕の障害と東日本大震災の二つの困難を乗り越えてきた女子大生が10日、冬季パラリンピック平昌大会の女子バイアスロン競技に出場する。「被災した古里にメダルを届けたい」。多くの声援を力に、不屈のアスリートが大一番に臨む。
 岩手県山田町出身で大東大4年の阿部友里香選手(22)=日立ソリューションズJSC、岩手・盛岡南高出=は、出生時のトラブルで左上腕機能不全の障害を負った。
 小さい頃から体を動かすのが大好きで、小学校の相撲大会は女子の部優勝。中学校のバレーボール部では片手でトスやレシーブを繰り出し、チームを引っ張った。
 「スポーツは健常者と一緒にやるもの。そう思っていた」。だから右腕でできることは必死で練習した。
 中学2年だった2010年冬、バンクーバー大会のテレビ中継にくぎ付けになった。自分と同じ障害のある選手が、ストック1本で滑っていた。「障害者が公平にできるスポーツがあった」
 地元の高校に進んだら本格的にスキー競技を始めようと思っていたとき、震災が起きた。町は壊滅。津波と火事で自宅を失った。
 スキー競技の強豪盛岡南高が震災特例で被災生徒を受け入れていることを知った。学校側は当初、障害者で競技初心者の入部に戸惑ったという。
 「健常者と同じようにお願いします。それで駄目なら仕方がありません」と母英美さん(51)が周囲を説得してくれた。
 中学卒業と同時に親元を離れ、ストックを握って3年足らず。「どんなにつらい練習でも絶対に諦めない子」(立花武良・盛岡南高スキー部顧問)は、高校3年でソチ大会のノルディックスキー距離15キロクラシカルに出場し、8位入賞を果たした。
 帰郷するたび、見知らぬ人が「友里香ちゃんに勇気をもらった」と声を掛けてくれる。「次は出るだけではなく結果を残したい」と平昌大会に照準を定めた。バイアスロンのほかクロスカントリースキーにも出場し、表彰台を狙う。
 少しずつ復興が進む山田町で1月、壮行会があった。阿部選手を「希望」と呼ぶ町民に、笑顔でベストパフォーマンスを誓った。