東日本大震災の発生から7年がたった。直線的に突き進む復興まちづくりの傍らで、被災した人々はときに立ち止まり、ときに後戻りを繰り返す。日々、重みを増す「心のケア」。その実相を岩手に探った。(盛岡総局・松本果奈)

◎こころ受け止めて(上)終わらぬ苦悩

<眠れず睡眠薬も>
 「寂しい気持ちは、しょっちゅう。海が怖いのも変わらない」。岩手県陸前高田市の災害公営住宅で1人暮らしの女性(85)がため息をつく。
 夫を病気で亡くし、長男は津波の犠牲になった。自宅は全壊。長男の妻、孫とも離れ離れになった。仮設住宅には友達もいたが、今は部屋に引きこもることが多くなった。
 横になっても眠れないまま明け方となり、睡眠薬を口にする。「震災でひどい目に遭った。こんなはずじゃなかった」。薄暗い部屋で悩みを打ち明ける。
 陸前高田市の傾聴ボランティア「こころのもり」の代表西條正夫さん(70)は、仮設住宅から移った住民が孤独感を強めていると指摘する。「隣の気配が感じられる仮設の方がよかった、と言う人もいる。転居して不安が増している人は多い」
 2012年2月開所の「岩手県こころのケアセンター」=?=に寄せられる相談件数は年間延べ約1万件。本年度は12月末までで6647件に上る。
 件数は年々減少傾向にあるが、相談1件に費やす時間は長くなっている。内容も家族や家計の悩み、体調不良などが絡み合って複雑化。うつ症状や不眠を訴える被災者と根気強く向き合わなければ、苦悩の本質にたどり着けない。
 県によると、震災に起因するとみられる自殺者も13~15年度は3~4人で推移していたが、16年度は6人、本年度は12月末現在で7人と時の経過とともに増えている。

<安心へ支援継続>
 ケアセンターの大塚耕太郎岩手医大教授(精神医学)は「環境が変化し、悩みやストレスが発生しやすい状況にある。インフラの復興が終わっても、被災者が心から安心して暮らせるようになるまで支援は終わらない」と話す。
 中でも、身近な人を失った悲しみを癒やすのは容易でない。県臨床心理士会は年に数回、盛岡市や宮古市で遺族を対象に思いを語り合うセミナーを開く。
 臨床心理士会の山田幸恵東海大准教授(臨床心理学)は「悲嘆は時間が解決するものではない。重症化する人もいる。今後も継続的なケアが必要だ」と強調する。

[岩手県こころのケアセンター] 本部は岩手医大(盛岡市)。大船渡、釜石、宮古、久慈の4市に地域拠点を置く。精神科医、保健師、臨床心理士、看護師ら約50人の態勢で被災者相談や市町村支援、人材育成を担う。