東日本大震災の発生から7年がたった。直線的に突き進む復興まちづくりの傍らで、被災した人々はときに立ち止まり、ときに後戻りを繰り返す。日々、重みを増す「心のケア」。その実相を岩手に探った。(盛岡総局・松本果奈)

◎こころ受け止めて(下)模索続く現場

<7割が被災地外>
 岩手県は2013年5月、岩手医大と連携して「いわてこどもケアセンター」を開設した。東日本大震災で強いストレスやトラウマ(心的外傷)を抱えた子どもに専門的な治療を施す。
 だが、新患の受診は半年から1年待ちの状態が恒常化している。震災から時を経て心の病を発症する子どもたち。ケアに当たる人材の確保も大きな課題だ。
 県教委が16年度に実施した「心とからだの健康観察」によると、精神的なサポートが必要な児童生徒は県内で1万4167人。11.5%に上った。
 八木淳子副センター長は「幼かった子どもが成長してようやく苦しみを打ち明けるケースが、今も一定の割合である」と話す。震災を直接経験していなくても、地域や家庭で大人から強い影響を受けてしまうことがあるという。
 本年度のセンターの受診件数は2月末で7021件と過去最高を更新した。受診した子どもの7割が被災地以外の生まれ育ちで、センターの認知度が高まった結果、震災由来ではない子どもの外来が増えた。
 「圧倒的に人材が足りない」と嘆く八木副センター長は「トラウマは人との関わりで回復できる障害。医師が足りない地域だからこそ、教育、福祉機関に力を付けてもらいたい」と訴える。

<支援の曲がり角>
 こうした状況を受けて県は新年度、「子どもの心の診療ネットワーク事業」で受診希望者に幅広く対応できる相談窓口の設置や専門的な人材の育成に乗り出す。
 人手不足の悩みは、被災者ケアに取り組むボランティア団体などに共通する。ニーズの変化や資金不足も重なり、支援は曲がり角に差し掛かっている。
 大船渡市などで被災者向けに手芸講座を開催してきたNPO法人「夢ネット大船渡」も、人のやりくりができず、3月末で活動を終える。理事長の岩城恭治さん(78)は「心の復興とは言うものの、被災者のための集まりはこうして終わってしまう」と肩を落とす。
 被災地で心のケアに取り組む佐々木誠岩手大特任准教授(臨床心理学)は「人は人に癒やされる。支援団体に代わって地域や被災者自身が交流の場をつくり出すのが望ましい」と助言する。

[いわてこどもケアセンター]本部は岩手医大矢巾キャンパス(岩手県矢巾町)。精神科医、看護師ら約20人で運営し、医大と宮古、釜石、大船渡の3市で15歳未満の心のケアに中長期的に携わる。