解体差し止めを求める仮処分が申し立てられた11日、岩手県大槌町の旧役場庁舎前には雨の中で手を合わせる町民の姿があった。この日は東日本大震災の月命日。「解体される前に花を供えたかった」。建物を巡り、職員遺族らの感情が交錯した。
 「前を通るのも嫌だったけれど、夫が働いた所だから…」。職員の夫=当時(51)=を亡くした女性(59)は、ほぼ7年ぶりに旧庁舎を訪ねた。
 解体差し止めの動きに、女性は「解体は仕方がないと考えていた。裁判所の判断を見守りたい」。亡くなった職員の母(80)は「なぜ、ここまでこじれてしまったのか」とつぶやいた。
 親類や友人が犠牲になった団体職員松崎誠さん(45)は「(建物を目にして)当時を思い出す人がいるのはかわいそう。自分も見たくない」と解体を望む。「事態を長引かせず、追悼公園にして慰霊碑を建ててほしい」と願った。
 やはり同級生が犠牲になった無職岩間英二さん(63)は「津波の脅威を伝える遺構として残した方がいいように思うが、忘れたい気持ちもある」と話した。
 仮処分を申し立てた「おおづちの未来と命を考える会」の高橋英悟代表は11日午後、大槌町役場を訪れ、「司法判断確定までの解体工事の中止」を要請。平野公三町長に代わって要請書を受け取った沢舘和彦副町長は「町長に伝えた上で返事したい」と硬い表情で応じた。