宮城県南4市9町が訪日外国人旅行者(インバウンド)誘致に連携して取り組んで3年目になる。一部の地域は観光客が増えたが、全体に効果が及んでいるとはいえない。豊かな自然と伝統文化に恵まれたポテンシャルを生かし、地方創生にどう結びつけるか。試行錯誤する県南を歩いた。(6回続き)

◎インバウンド誘致は今(6完)掘り起こす

 打ち捨てられた空き家と旧農地が、訪日外国人旅行者(インバウンド)誘致の切り札に生まれ変わるかも知れない。

<町挙げて「農泊」>
 蔵王町で「農泊」(農山漁村滞在型旅行)を進める蔵王農泊振興協議会。来春、遠刈田温泉へ向かう県道沿いの建物をリノベーションして活動拠点を開く。
 協議会は町内の農業者組織や福祉、NPO法人など7団体で10月発足。拠点には農家レストランや宿泊室、観光農園などを設ける。
 会長の相沢国弘さん(46)は「空き家や耕作放棄地も活用し、蔵王にある資源を集めてインバウンドを呼び込む。移住や交流人口を増やしたい」と語る。
 相沢さんは、同町遠刈田温泉の別荘地「蔵王山水苑(えん)」を管理運営する会社の役員。8月に別荘で始めた民泊で手応えを感じていた。
 別荘2棟に2カ月半で約40組が宿泊。半数近くがインバウンドで、欧米からの客が増えているという。
 山水苑の民泊部門と協議会の運営を担う宇田川敬之さん(46)は「欧米の旅行者には長期滞在型の農泊のニーズがある。農泊の活性化は、地域の雇用増にもつながる」と期待する。
 農泊には体験プログラムや食材の提供、飲食や宿泊の施設運営など多様な役割があり、高齢者や障害者らの活躍の場にもなる。民泊仲介サイトや旅行業者とも連携し、インバウンドでの地域活性化を目指す。

<日本らしさ凝縮>
 県南4市9町の外国人宿泊者は増え続けている。県大河原地方振興事務所によると、2015年の9555人が、16年は1万22人、17年は1万5141人まで伸びた。
 インバウンド誘致会社「侍」(丸森町)社長の太見洋介さん(41)は、県南の魅力を「コンパクト・ジャパン」と評する。
 「旅慣れた個人客が増え、あまり有名ではないけれど奥深い魅力がある宿や場所を探している。温泉や食文化、田園風景、神社仏閣といった日本らしさが凝縮した県南には大きな可能性がある」と力を込める。
 観覧するだけだった村田町役場近くの武家屋敷。改修工事を経て10月、宿泊体験施設になった。
 江戸後期に建てられ、いろりや土間、水路、蔵のある庭園を備える。インバウンドの人気を呼びそうだが、運営するまちづくり村田専務の千葉勝由さん(62)は「外国客を狙ったわけではない」と言い切る。
 国を挙げてインバウンド誘致を進める2020年東京五輪・パラリンピックまでは多様な財政支援があるが、その先は見通せない。
 「地元では気付かない視点をインバウンドから学び、国際会議の誘致など国際化推進や国内からの誘客策に生かしたい」。仙台空港から車で往復1時間ほどの地の利と、蔵の街並みや発酵食文化を生かせる手だてはないか。千葉さんは、ブームの先を見据える。(白石支局・村上俊)