若者の映画離れや過疎化などで経営に苦戦する地方の映画館が多い中、青森市のミニシアターが落語の寄席を2カ月に1回程度開催し、活路を見いだそうとしている。映画館へ足を運んだことのないような新たな客層の獲得が狙いだ。
 「デンマークに行ったら、向こうの学生はイケメンばかり。背が5メートルもあるんです」。10月14日、青森市の「シネマディクト」。落語家柳家喬太郎さんが自身が欧州に行った時の話や、落語「仏馬」などを披露すると、館内は観客約150人の笑い声に包まれた。
 かつて市内に20館以上あった映画館は、3館だけになった。シネマディクトは、前身の奈良屋劇場から60年以上の歴史がある。「音響設備が良いから、ここで落語をやれば面白いのでは」と常連客から言われたのをきっかけに、館長の谷田恵一さん(57)が2006年から寄席を始めた。
 当初は「落語を聞きに来たのに映画の予告編をスクリーン上で流されたら興ざめする」といった苦情も寄せられたが、今や前売り券が興行の1カ月前には完売する人気イベントに。来春には立川志らくさんが高座に上がる予定だ。
 寄席を楽しんだ青森市の中学教諭奈良之弘さん(55)は「至近距離で喬太郎さんの手元のしぐさまでよく見えた。寄席の前に流れた予告を見て、上映予定の映画にも興味をそそられた」と話した。
 地域の映画館を支援する「コミュニティシネマセンター」(東京)の岩崎ゆう子事務局長は「昔と違い、家庭で気軽にDVDを鑑賞できる時代。映画を単に上映するだけではなく、(個性を発揮し)地域で特別な存在になることが大切だ」と話す。