「日本人初のルートでの南極点到達を成し遂げ、帰ってくる」。秋田市出身の冒険家阿部雅龍さん(35)は、約40日かけて約900キロを歩く初の南極遠征に自信を見せる。
 9日に成田空港を出発する。南米チリの最南部プンタアレナスで最後の準備をしてから18日前後に南極に渡り、飛行機でロンネ棚氷に移動して本番に臨む予定。南極点到着の日は誕生日の12月29日が目標だ。
 無補給、単独とあって、食料やテントなど重さ100キロの荷物をそりで引いて歩き続ける。阿部さんは「極地冒険で最も困難な手法」と言う。
 秋田大在学中に冒険活動を始めた。最終目標は、1910~12年に日本人初の南極探検を行ったにかほ市出身の白瀬矗(のぶ)(1861~1946年)が断念したルートをたどって南極点に到達すること。「次は白瀬の夢を完結させたい」と意欲を燃やす。


◎鍛造ナイフ踏破の支え 秋田大後輩・七尾さん製作 大切な「相棒」磨く

 日本人未踏破ルートでの南極点到達を目指す秋田市出身の冒険家阿部雅龍さん(35)=東京都=の挑戦を、1本のチタン合金製ナイフが支える。製作したのは阿部さんの母校である秋田大の国際資源学研究科の大学院生七尾純平さん(27)ら。阿部さんは後輩が手掛けたナイフを携え、南極に向けて9日に日本をたつ。
 手作りの炉で900度以上に熱して鍛造した自慢の品。七尾さんは「自作した物が極地の冒険に使われるのがうれしい」と話す。
 七尾さんは同大工学資源学部2年生だった2013年、自主的に取り組む「KAJIYAプロジェクト」のリーダーとして学内の炉で刃物などを製作。指導教官の仲介で同じ学部出身の阿部さんと出会った。
 「軽くて極低温の環境でも使えるナイフを作れないだろうか」と相談され、条件に合う素材としてアルミニウムやバナジウムを含むチタン合金「64チタン」を選択。作業に取り掛かった。
 これまでに4本を仕上げ、2本目以降は阿部さんが北極圏の単独徒歩での冒険に持参して試した。「より小さく」「つかの金属部分に革を巻いて」などの要望があれば、その都度七尾さんが応えた。
 16年には全長190ミリ、さやを含む総重量90グラムの通算4本目となる現在のモデルが完成した。刃の表には「ABE MASATATSU」、裏には「七尾作」の文字を彫った。
 最新モデルは16年の北極圏遠征で使った後、学内で展示していた。南極行きが迫った10月下旬、七尾さんが刃こぼれを一晩かけて砥石(といし)で丁寧に研いだ。「完璧な状態にしたい」と細かな傷も見逃さず、2時間かかる作業を3度繰り返した。
 元の鋭さを取り戻したナイフは、10月25日に秋田市内で開かれた壮行会で阿部さんに再び引き渡された。
 ナイフは水を作るために氷を削ったり、テント設営の穴を掘ったりする時に使う。遠征中は常に身に着ける「相棒」だ。「一緒に作り上げた守り刀を南極点に持って行ってほしい」。七尾さんはメッセージをナイフに託す。