北国に住む私たちにとって、雪は切っても切り離せない。暖冬の予報でも降る時には降るし、元日から雪かきや雪下ろしに追われている人もいるだろう。どうせなら雪を楽しみ、暮らしの中に生かしたい。そんな知恵や取り組みを、東北各地に探る。

 世界自然遺産白神山地のなだらかな山裾が日本海に向かって広がる標高約200メートルの台地。「ふかうら雪人参(にんじん)」は、雪の下で寒さに耐えながら甘み成分などを凝縮させる。

 栽培するのは農事組合法人「舮作(へなし)興農組合」(青森県深浦町)。7月に種まきした畑では、12月から翌年3月まで、日本海からの寒風が吹きすさぶ厳しい環境下での収穫が続く。雪をかぶった土の中から、腰を曲げ手で一本一本掘り出す。

 収穫したニンジンには、粘土質の土がべったりと付く。作業に当たるのは、アルバイトを含め35人の全従業員。雪や雨が降っても休めない重労働だ。

<商標登録>
 「ジュースもおいしいが、甘みが増すので天ぷらにするのもいい」。組合の代表理事坂本正人さん(75)が教えてくれた。最大の特長はフルーツのような甘さとうま味。通常のニンジンと比べ、ショ糖が約2倍、うま味となるグルタミン酸が約4倍にもなるという。「雪の布団」のおかげだ。

 雪の下からニンジンの収穫を始めたのは1996年ごろで、偶然の産物だった。降雪後に収穫したニンジンは大根と違って凍っておらず、食べてみたらおいしかった。従業員を雇用する組合として、冬期間の収入確保が課題だったことから、坂本さんは「これはいける」と思った。

 栽培が軌道に乗ると、ブランド化にも取り組んだ。2008年に「ふかうら雪人参」の名称を入れた図形商標権を取得。登録期間満了となる18年10月には、名称のみで商標登録した。地名が付いた一般名称の登録は珍しいという。

<浸透図る>
 現在、54ヘクタールで年間約1000トンを生産するまでになった。大半が加工用だ。大手食品メーカーと契約し、年約400トンをジュース用に出荷。相場に左右されずに、安定した収入を得ている。

 商標登録した名称は、加工商品に無料で使用することを許可し、浸透を図った。深浦町内の宿泊施設の売店ではジュースのほか、ドーナツをはじめとした菓子類、ジャムやドレッシングなど10種類以上の商品が並ぶ。

 坂本さんは「よくここまでこられた」と振り返るとともに、町名を名称の一部にしたことで「知名度向上で町にも貢献できたのではないか」と満足げだ。

 自身を含め、従業員の高齢化が最大の悩みだが「元気なうちは今の規模で生産を続ける」と決意を新たにする。(青森総局・佐藤謙一)

[舮作興農組合]1975年に地元の漁師5戸で設立。翌年法人となった。現在の耕作面積は約150ヘクタール。ニンジンのほか、ジャガイモや漬物用の大根を栽培する。化学肥料や農薬の使用を抑え、2007年に青森県からエコファーマーの認定を受けた。連絡先は0173(75)2120。