秋田県の男鹿半島に伝わるナマハゲを含む「来訪神 仮面・仮装の神々」が昨年11月末、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産登録が決まった。ナマハゲの地元・男鹿市はそれを機に、関連施設の来場者が大きく伸びるなど早速「登録効果」に活気づいている。伝統文化の継承が難しくなりつつある中で、伝承を担ってきた関係者らは地域が誇るナマハゲへの関心の高まりを期待している。(秋田総局・佐藤駿伍)

 迫力ある150枚の面がずらりと並ぶ。男鹿市北浦真山地区の「なまはげ館」は、市内各地区に受け継がれるナマハゲの面や歴史を紹介するパネルなどを展示している。来館者は解説を聞きながら興味深そうに眺め、気に入った面を写真に収めていく。

<試験盛況>
 無形文化遺産への登録が決まった後、来館者数は前年の2倍近くに増えている。登録決定直後の週末となった12月1、2日は計697人(前年同期比462人増)が詰め掛けた。
 同館を運営するおが地域振興公社は「例年、12月は閑散期。登録の効果を感じる」と目を輝かせる。
 ナマハゲに関する知識や理解を深めてもらおうと、市観光協会が12月2日に実施した「ナマハゲ伝導士認定試験」への関心も高かった。受験定員の90人を超す申し込みがあり、県内外の99人が挑んだ。
 菅原広二市長は12月26日の定例記者会見で「ナマハゲが世界に認められ、男鹿が注目されている。(ナマハゲが乱舞する2月の)柴灯(せど)まつりなどに、首都圏からもあふれるほどの人が来てくれたらうれしい」と語った。

<風が吹く>
 無形文化遺産の登録を目指し、実現に至るまでの間に地元の人々がナマハゲを見詰め直す機運も生まれた。船川港船川の曙町2区は約10年間途絶えていたナマハゲ行事を、この冬に復活させた。
 写真店を営む三浦良忠さん(60)が昨年の新年会で若手に復活を持ち掛けたことをきっかけに、準備を進めてきた。隣の曙町1区から面を借り、他の地区からわらでできたナマハゲの衣装「ケデ」の作り方を学ぶなどして道具をそろえた。
 登録は追い風となった。三浦さんは「長期間途絶えていたこともあり、住民が受け入れてくれるか不安はあった。住民自身も関心を高めており、復活を地域の交流にもつなげたい」と意気込む。
 市文化スポーツ課によると、曙町2区を含む少なくとも7町内で復活の動きがあるという。

<市民一体>
 真山地区の「真山なまはげ伝承会」の菅原昇会長(75)はナマハゲへの理解が深まり、男鹿が誇る文化の伝承に向けて市民が一体となるべきだと訴える。
 市内の多くの地域はナマハゲの担い手不足に直面してきた。さらに、大みそかに集落の家々を訪ね歩くナマハゲを招き入れる家が減少している現状もある。もてなしの負担が、一つの要因だという。
 無形文化遺産となったことを弾みに、ナマハゲ行事への参加を志す若者が現れるかもしれない-。菅原さんはそんな期待を込めて、「担い手と受け入れる側の双方がナマハゲの意義を再考し、改めて男鹿全体で文化遺産に恥じない行事にしていきたい」と誓う。