新年度、岩手県の「新総合計画」(2019~28年度)がスタートする。目指すべき岩手の将来像を明示した県政運営の最上位計画だ。策定を主導する達増拓也知事に聞いた。(聞き手は盛岡総局・浦響子)

<地方で豊かに>
 -新計画は「幸福」追求を前面に押し出した。
 「意識したのは東日本大震災の経験だ。被災者もそうでない人もオール岩手で復興に取り組んできた。県と県民にとって次の10年がどうあるべきかを考えると、これはもう『幸福』しかない」
 「平成の30年間に日本経済は停滞し、政治も迷走気味だった。人口移動や所得統計では東京だけが繁栄しているように見えるが、ブラック企業や過労死といった問題が起きているのも東京だ」
 「一方で地方は、スポーツや文化に象徴される『豊かさ』を増してきた。日本全体の政治や経済の調子が悪い中、これからの日本を救う道は地方にこそあるとの視点に立った『人間を幸福にするシステム』が求められている」

 -「幸福度指標」の導入が物議を醸している。
 「所得低迷と雇用先不足による人口流出で地方経済が厳しくなる中で策定した現行計画は、経済指標にこだわった。今は復興の過程で経済情勢が好転し、雇用先より人手の不足が深刻だ。そもそも人生にとって何が大事かを考えることが大切な時代になった」
 「例えば『学力が全国平均以上の児童生徒の割合』は、競争の激化で生きる意欲が衰えては本末転倒だし、一方で一定の学力を身につけないと幸福になれないという考え方もある。多くの意見をいただきながら決めていきたい」

<ILCは前提>
 -成長戦略と一線を画しつつ「国際リニアコライダー(ILC)」誘致を目指すのは、矛盾ではないか。
 「人類共通の宝物である北上山地の花こう岩盤を使った最新の研究施設は、そこにあるものを生かして未来を切り開くという地域資源活用の一環だ。全く関係ないものを持って来るのとは違う」

 -ILC誘致は見通しが危うくなってきた。
 「新計画は誘致実現を前提に作っている。誘致が決まれば、『待ってました』と計画を実行していくのみだ」
 「震災が起きたときも現行計画を見直すべきだと考える人もいた。しかし別建てで復興計画を作ったし、目指すべき方向性は現行計画と矛盾していなかったから全く修正しなかった。ILCの誘致いかんで新計画を変更するというのは考えにくい」

 -間もなく震災発生から8年。ポスト復興の岩手はどうなっているのか。
 「6~8月に開催される博覧会『三陸防災復興プロジェクト2019』を通じて三陸沿岸の今後のありようが見えてくるのではないか。美しい自然、おいしい食べ物、歴史や文化に基づいたおもてなしの力は魅力的だし、防災を深く学べる世界有数の地域になる」