◎南三陸復興ダコの会会長 大森丈広さん(35)=南三陸町=
 タコをモチーフにした縁起物のキャラクター「オクトパス君」。受験シーズンを前に、グッズの製作と販売を手掛ける南三陸町のYES工房が書き入れ時を迎えている。

 「受験は人生の大イベント。合格を願い、スタッフが心を込めて作業に当たっている」。工房を運営する南三陸復興ダコの会の会長大森丈広さん(35)が柔和な表情で語る。

 オクトパス君は町特産のタコと「置くとパス(合格)する」を掛けたキャラクター。手作業で色が塗られた文鎮は累計販売数が10万個を超える人気商品だ。

 タコのかわいらしい見た目に「癒やされる」という声も。大森さんは「頑張っている受験生に『頑張れ』ではなく、『ゆるく』応援するのがオクトパス君の世界観」と強調する。

 復興ダコの会は東日本大震災後の地域振興を目的に設立された任意団体。2011年7月に廃校だった旧入谷中を改装して工房を開いた。

 大森さんが工房に入ったのは開設の1年後。震災を機に仙台から地元に戻り、町役場の臨時職員として働いていた時に工房の活動を知ったのがきっかけだった。

 子どもの頃からイラストが得意で、東京のゲーム制作会社でデザインの仕事の経験がある大森さん。主にオクトパス君グッズのデザインや広報を担い、関連商品は約40種類を数える。「技術を生かせる職場が見つかり、巡り合わせを感じた。工房がなければ、再び古里を離れていたかもしれない」と振り返る。

 昨年6月から会長を任され、「工房の売り上げを伸ばすため、オクトパス君の可能性を広げる仕掛けやインターネットの宣伝を強化したい」と意気込む。

 オクトパス君の文鎮を考案した復興ダコの会事務局長の阿部忠義さん(60)は「優れたデザイン力を持っている。事業を通じて一緒に地域を盛り上げていきたい」と語る。

 「県外から工房まで合格の報告に来てくれる人がいる。喜びの声を聞いた時が何よりもうれしい」と大森さん。今年も受験生や支える家族から吉報が届くのを心待ちにしている。(南三陸支局・佐々木智也)

[メモ]南三陸復興ダコの会はオクトパス君グッズのほか、南三陸杉の間伐材や繭を使った工芸品を製作する。YES工房ではオクトパス君の文鎮の色塗り、スプーンやフォーク作りの木工体験ができる。