東北芸術工科大大学院2年の金洸志(きんこうし)さん(24)=山形市=が、東日本大震災の被災地に建立された慰霊碑500基を記録・分析した修了研究の成果を卒業制作展で発表する。碑に込められた人々の思いや建立の経緯を紹介し、現地で撮影した写真200枚を展示。大船渡市出身の金さんは「いしぶみが風化防止に果たす役割を見詰め直し、震災を思い起こす機会にしたい」と誓う。

 制作展は6~11日に同大であり、金さんは現地の写真500枚のうち200枚を学生会館2階ギャラリーの壁一面に張って展示するほか、短文投稿サイト「ツイッター」の投稿画面をスライド上映する。
 金さんは2017年7月から1年4カ月間、被災地の慰霊碑や祈念碑を訪ね歩き、碑の写真を撮影してはツイッターに投稿してきた。震災発生時刻に自動で鐘が鳴る物や、4年に1度建て直す木製の碑もあり、建立した住民たちのさまざまな工夫や願いがしのばれるという。
 高校1年の時に震災を経験した金さん。家族は無事だったが自宅は半壊し、父が住職を務める寺は浸水した。変わり果てた街や生活に戸惑う一方、「家族を亡くした人は自分より苦しいはず」と思うと、震災をうまく言葉にできなかった。
 時間の経過とともに震災の風化を強く感じ、修了研究で「被災した一人としてできることをやるべきではないか」と、初めて震災に向き合うことにした。
 研究は、父が震災後に境内に建立した慰霊碑をヒントに「風化防止に慰霊碑が果たす役割は大きいのではないか」と調査を開始。地域ごとに異なる形や色、材質に気付き、それぞれの弔いの形や込められた思いを発信したいと考えるようになった。
 金さんは「慰霊碑は後世に何を伝えようとしているのかを想像してもらい、改めて震災を考えるきっかけになれば」と話す。展示会場では、研究内容をまとめた冊子も数量限定で配る予定だ。
 展示は午前10時~午後5時。入場無料。連絡先は東北芸工大企画広報課023(627)2246。